参院安保法制特別委員会委員の山下雄平・自民党参院議員に、上久保ゼミで特別講義をしていただいた。山下議員は、筆者が英国ウォーリック大学大学院留学中に、慶応大学から来ていた交換留学生だった。その後、彼は時事通信・日本経済新聞社の記者を経て参院議員となったが、ずっと親交が続いてきた。常々、都合がつけば大学に講義に来てほしいとお願いしてきたが、今回、実現することができた。

 山下議員は90分間の講義で、国会議員や政治記者の経験を踏まえ、自民党の政策過程、特に与党事前審査制の問題点や法務委員会で取り組んだ少年法、18歳参政権の意義、そして安保法制と政策論を展開してくれた。

 特に安保法制に関して、その必要性を説明しながらも「一方で、反対論は必要。反対論がなくなる社会は危険」と述べた。また「徴兵制」や「核武装」などが、日本政府の現実的選択肢となり得ないことを財政問題や日米関係の本質の観点から丁寧に説明するなど、現実的、かつ日本政治全体を包括的に捉えたバランスのある話だった。また、「上久保ゼミ名物」の「90分間の質疑応答」での学生の次々の質問にも、すべて明解に答えてくれた。学生の政治理解は格段に高まり、非常に意義深い時間となった。

 なにより、自民党への批判が厳しく、安保法制に関して微妙な言論統制の空気が流れている大学という場所(第112回)に来て、しかも「安保法制に反対だからこそ、呼びたい」という筆者の呼びかけに応えて、堂々と学生に話をしてくれた山下議員の言論・思想信条の自由に対する理解を感謝し、その勇気を称えたい。

上久保ゼミでの山下雄平議員の特別講義(筆者撮影)

「難民家族から若者だけを引き離して受け入れる」と言い
世界に恥を晒す日本政府

 さて、ここからは一転して、山下議員が所属する自民党に苦言を呈したい。安倍晋三政権は、深刻化するシリア難民問題について、「難民の若者を留学生として日本で受け入れる」検討を始めたという。受け入れの対象として検討しているのは、内戦や過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭による戦火を逃れて、シリア国内のほか、トルコやレバノンなど周辺国に避難して学習機会を奪われている若者らで、受け入れ人数は数十人程度だという。安倍政権は若い世代の人材育成に貢献できるとアピールしている。

 安倍政権は、いったいなにを考えているのかと、強く批判したい。難民は、戦火から家族で逃げている人たちだ。おじいさん、おばあさん、夫婦、子どもが一緒に逃げている。そこから子どもだけを抜き取って受け入れるというのか?後に残される家族のことは知らないから、欧州で面倒見てやれとでもいうのだろうか?