観光資源は“忍者の存在感を
リアルに感じる”こと

 現段階での課題もある。忍者ゆかりの地として、施設やサービスが少ないという点だ。市内には甲賀流忍術屋敷や甲賀の里 忍術村もあるが、それだけでは物足りない。今後は、実際に甲賀流=本物を感じてもらうためのハード整備や、本物の忍者観光をガイダンスできるソフト整備、さらには甲賀流忍者の伝道師として活躍できる人材育成などが必要だという。

 市の観光企画推進室では、同じ忍者の里として知られる三重県伊賀市と人材交流を行い、忍者をテーマに地方創生にアプローチする方法も学ばせた。その結果、やはり他の忍びの里とは差別化された“甲賀流らしさ”を確立しようという志が芽生えたという。

 もともとは、市民幸福度の最大化で人口減少に挑もうという「甲賀の國づくりプロジェクト」から生まれた地方創生の戦略であり、ふるさと愛の醸成が根本にある。

「かつて東西の交通の中間に位置し、首領のいないフラットな組織体系を持ち、団結力と情報収集力にたけ、判断力と決断力を誇った甲賀忍者。その忍者をキーワードに、広域連携の下でインバウンドマーケティングを進め、同時に東海道の街並みや、信楽焼やお茶、自然や文化、伝統技術など、地域の観光資源のさらなるブランド化を図っていきたい」と抱負を語る中嶋市長。

「本物の忍者がいたまち、いるまち」として、その存在感がリアルに感じられることを観光動機付けにすることは、一見ハードルが高くもある。だが、忍者ファンや歴史ファンを中心に、忍者の本物感、存在感を情報として発信することには、類のない独自性がある。

 新名神高速道路を利用すれば、大阪や名古屋から車で約1時間と、滞在型の観光地としてアクセスも悪くない。甲賀市の果敢なチャレンジに注目したい。