賃貸住宅経営を中心とした不動産投資を行う人が増えているという。確かに、貸家着工数も2012年以降増加に転じている。人口減少が進む日本でも、賃貸住宅需要は底堅い──。そう語る不動産エコノミスト・吉崎誠二氏が、根拠を解説。不動産投資の展望と、賃貸住宅経営の極意についても聞いた。

2012年以降
貸家着工数だけが増加

 賃貸住宅経営を中心とした不動産投資を行う人の目的は、「不動産資産価値の上昇期待」「利回り狙い」「将来の私的年金(賃料)のため」「節税目的」などさまざま。昨今はこれに、先行き不透明な景気状況の中、「資産を守るための防衛策として」、あるいは、「将来のインフレに対するリスクヘッジとして」という目的が加わりつつあるという。

 住宅着工数の推移を見ても、リーマンショックなどの影響で2008年以降減少を続けてきた貸家(主に賃貸住宅)着工数が、12年以降増加に転じている。

「前回の消費税増税時(14年4月1日)は、前年の13年に住宅の駆け込み購入(契約)が相当数ありました。翌14年は反動減となり、持ち家で前年比20%減、分譲住宅で10%減と着工数が大きく落ち込む中、賃貸住宅だけは2%増えている。続く15年も前年比4.6%増と、上り調子になっています」(図1参照)

 こう指摘するのは、不動産エコノミストの吉崎誠二氏。では16年以降はどうなのか。まずは2月のマイナス金利導入による影響から教えてもらおう。

マイナス金利導入など
不動産投資に追い風が

 住宅系の不動産投資を大別すると、(1)区分マンションを購入して賃貸に出す、(2)自分の土地に賃貸物件を建てる、(3)賃貸用建売物件を買う、という三つのパターンがある。いずれの場合もほとんどの人が賃貸住宅用ローンを利用することになり、マイナス金利導入でローン金利が下がれば、当然、不動産投資の追い風になる、と吉崎氏は言う。

「不動産のローン金利は、これまでも、『過去最低水準の更新』などといわれてきましたが、それは変動金利や優遇金利の話でした。ところが今は、長期国債、長期プライムレートがそれぞれ下がってきているのを背景に、長期の固定金利も0.5%あたりで安定している。これは大きな安心材料だと思います」

 自分の土地に賃貸物件などを建てる土地活用に関しても、昨今の建築コストの高騰が一息つき、先が見える状況になった。これも安心感につながるという。

 そこで16年の賃貸住宅着工数は、15年より2~3%増加するだろうと、吉崎氏は予測する。