アルバイトから正社員になり、15年間、勤め続けている中堅の場合。
「情報誌を見ていたら、ここの広告がどっと目に飛び込んできた。正直、このシゴトがいっちばん、何するかわかんなかったんすよ」
電気工事や運送業を経験した別の社員は、こう。
「肉体労働、大好きですから」
色白で、絵画の営業とIT関連のシゴトを経験したという26歳は、言葉少なにこう言った。
「前のシゴトより、いいっす。じゃなきゃ、いないっすよ」
氷屋というと、おじさんが炎天下にムシロの上で氷を切っている姿を思い浮かべてしまう。だが、現代の氷屋はもっとハイテクである。作業は当然のごとく室内。高速回転の電動ノコギリと格闘し、専用機で氷を砕き、マイナス20度の冷凍庫に入ったり出たりを繰り返す。暑がりにはいいが、寒がりにはお勧めできない。
なかには、企業のロゴマークをコンピューターで取り込み、寸分の違いなく氷に彫り込むアートな業者もいる。だが、それは業界用語で言うところの「キワモノ」だ。飯倉商会は「キワモノ」を追わない。ストイックに、グラスの中にある氷だけを追いかける。
午前8時半。機械で「かち割り氷」を作るプロセスを見せてもらう。
準備するのは、電動ノコギリで縦にスライスした分厚い板状の氷だ。スタッフの1人がそれを持ち上げ、「どぶづけ」と呼ばれる水の入った容器に浸す。
「あれは何を?」
「表面を少し溶かすというか、きれいにしてから砕くんです」
氷を砕氷機に入れると、ガガガガッと威勢のいい音が部屋中に鳴り響く。その勇ましい音とともに、砕かれた氷が次々とはき出されてくる。
出てくる氷の通り道は3つだ。機械の底に網が付いていて、その網目を通るかどうかで、3種類に分別される。大ぶりで、粒のそろったものだけが一番高く売れる。フレーク状になったものは下へ下へと下りていって、鮮魚の保存や盛りつけ用として販売される。
ひときわ恰幅のいいスタッフが、機械に負けじと懸命に氷を袋詰めする。積み上がった氷の袋はいったん、奥の冷凍庫へ保管され、配達の時が来るのを待つ。
「スピード」と「繊細さ」が同時に求められるのが、氷加工の難しさである。



