ゴルフは通常、18ホールを4人1組で回る。この4人の荷物を運び、スムーズにプレーが進行するよう、お世話をしたり、アドバイスをしたりするのがキャディだ。
そのキャディが今、危機に瀕しているという。
バブル崩壊後の過当競争だけではない
ゴルフ場が恐れる「2015年問題」
「18ホールで40組入ったとして、2人に1人付けると最低でも80人。勤務時間は不規則だから、在籍数で言うと……かつてはひとつのゴルフ場に100人くらいのキャディは必要だったと思いますね」
そうすらすらと計算するのは、ゴルフ場のコンサルティングを手がけるメリージャンクション専務の前田晴美さんだ。むろん、2人に1人もキャディが付いていたのはバブルの頃の話である。
バブル崩壊で、それが4人に1人に戻れば、単純計算でキャディの数はおよそ半分に減る。景気悪化とともにキャディの付かないセルフプレイも増え、ゴルフ場に所属するハウスキャディの数はどんどん減っている。
「今はせいぜい、ひとつのゴルフ場に20人から40人くらいでしょうか」と、前田さん。
キャディと言えば、かつては「半農半キャディ」と言われるほど、農家の主婦が片手間にするアルバイトのイメージが強かった。それがゴルフ人口の増加に伴いサラリーマンの主婦層にも広がり、パートタイマーや正社員としても定着。今ではそれが重荷となり、コンペなど必要な時だけ駆けつける「派遣キャディ」に置き換えられている。
ゴルフ場がこれまでおもなターゲットとしてきた団塊世代は、2015年を境に全員が65歳以上となる。若者や女性のゴルフプレイヤーが多少増えつつあるものの、現状のままでは、74歳までをターゲットに取り込んでいかないと経営が成り立たない。これを、ゴルフ場の「2015年問題」という。
「介護や看護に精通したキャディさんが必要になりますね」
「今でも、ひとつのゴルフ場あたり年に2、3回は救急車を呼ぶ事態が発生していますから。あり得る話です」と応じる前田さん。
しかし、プレイヤーの高齢化が即、キャディを救うことにつながるかというと、そうでもないらしい。
手押し車のカートが電動で動くようになり、さらには車のように運転できる乗用カートへと進化するにしたがい、ゴルフ場内での移動は随分と楽になってきている。
こうなると、現金なもので、一回あたり3000円から5000円のキャディフィーを惜しむ声はますます高まる。
要するに、求められるものは高くなるのだが、それに応じた報酬は得られそうにない。