「電話ではなぜ、社名ではなく氷屋と?」

 4代目社長の植松寛さん(46)が、解説する。

 「”ふじひょうしつ”って言いにくいし、聞き取りにくいでしょ。言い直すと時間かかるし」

 スタッフは18人で、ほとんどが20代から30代のアルバイトだ。全員、そろいの黒いTシャツを着ている。背中に、「冨」の文字をあしらったオリジナルのロゴも見える。冬はそのTシャツが、オリジナルのトレーナーとジャンパーに変わる。

 植松さんが目指すのは、クールでホットな「日本一の氷屋」だ。会社のホームページにも、こう書いてある。

 「氷は扱っていますが、熱いハートを持った超Coolな有志たちです」

 金髪パンクやドレッドヘアの有志を見ると、多少はびびる。だが、礼儀正しくあいさつされて感動。このギャップがまた、クールである。氷が「溶かしちゃいかん」と指示するがごとく、彼らはきびきびと動く。植松さんはそのクールさを一般にもアピールしようと、ユニフォームも販売している。

 「でも、今は売り切れです」

 もしや、氷よりユニフォームの方が儲かる?

 「だって、10着分くらいしか余分に作ってないもん」

 もっと派手に売り出しましょうよと提案すると、植松さんが深刻顔で打ち明ける。

 「お客さんが、ユニフォームを買った人をうちのスタッフと間違って氷を注文しちゃうんですよ」

 という訳で、ユニフォーム作戦は中止。数年前、ユニクロとコラボTシャツを売り出した時も、「社名は極力入れないで」とお願いしたほどだという。

 「ところで、氷屋さんって女性はいませんね。応募がないんでしょうか?」

 「たまに来ますよ、体育大学出身者が。だけど、続かないです。間違っていましたとか言って、1日でやめる」

 ところが、ハマる人はハマるのである。男性だと、短くても2年は続くという。

 「居やすいんじゃないのかなあ。めんどくさくないし」と、植松さん。

次のページ

「目立たないけど、人を幸せにする」氷屋の魅力

TOP