総合職か一般職か。就職を控えた学生なら、悩ましいテーマのひとつである。2年前に四年制大学を卒業したさやかさん(仮名、24歳)の選択は、一般職だった。

「最初は総合職がいいと思っていたんです。でも、途中で、自分、なんか無理しているなと気がついて」

 勉強はよくできる方だった。ゼミでもサークルでも頼りにされ、友だちからは「バリバリ働くタイプだよね」と言われてきた。男女の分け隔てなく働ける会社で、商品企画のシゴトをする。当初は、そんな夢を抱いていた。

 ところが、だ。就職活動で各社を回り始めて、気が変わった。

「総合職は向いていない」と思ったのである。

「国内でも海外でも1人で転勤できますか、と言われて、やっぱり無理だなと。それよりも、自分はもっとこつこつ、地道な作業が向いているような気がしてきたんです」

 方針をぐるりと転換し、老舗メーカーの一般職に応募した。現在は、その人事部で給与・賞与の計算や社会保険の手続き、人事異動の発令、新人研修などのシゴトに携わっている。営業はもっぱら男性で、内勤は女性という、昔ながらの企業風土。地味な制服に身を包み、ひたすら机とパソコンに向かう。当初とは、業種もイメージもまったく違う。

 毎月必ずしなければならないのは、タイムカードの集計だ。

「社員が1万人以上いますから、書類は膨大です。よし、今日は打ち込むぞという時は、机の周りにファイルを積んで、なるべく動かなくてもいいようにしてから始めます」

「社内に出す書類って、現場の人は煩わしいだけと思っているみたいですね。でも、こちらはそれがないとシゴトが始まらない。催促すると、邪険にされることもあります」

「日々、書類と格闘です。データの作成と集計、その確認という作業がほとんどです」

 書類、データ、確認。あまりわくわくするような言葉ではない。なので、思わず口に出た。

「どういうところに、やりがいを感じるのでしょう?」