意識の違いで
省エネ行動に差

住環境計画研究所 代表取締役所長 中上英俊(なかがみ・ひでとし)氏 東京大学大学院工学系研究科建築学専門課程博士課程修了。住環境計画研究所を創設し現在に至る。工学博士。日本学術会議連携会員、東京工業大学統合研究院ソリューション 研究機構特任教授、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科教授ほか、エネルギー分野を中心に多方面で活躍している。

 人は、自分が省エネ型人間か、エネルギー浪費型人間であるかを、日頃あまり意識していない。住環境計画研究所が調査したところ、平均エネルギー消費量を1・0としたとき、エネルギー浪費型世帯では1・31倍(31%増エネ)、省エネ型世帯では0・79倍(21%省エネ)という極端な差があった。冷暖房エネルギーに限るとさらに差が開き、浪費型は、省エネ型の2倍ものエネルギーを使っていることがわかった。

「企業の場合は、家庭のような単純比較はできませんが、たとえば小売業300社を調査したところ、やはり2倍程度のエネルギー消費の格差が出ました。また、オーナーがすべて占有している自社ビル(省エネ型)と、テナントだけのビル(浪費型)比較でも、差し引き30%もの差が出ています」(中上所長)

 改正省エネ法の施行は、経営効率の改善という視点から見れば、ビッグチャンスだといえる。それほど社員一人ひとりの〝省エネ意識の差〟は、企業会計に大きく響くのである。

「できれば自社の省エネレベルがどの程度かがわかるように、国は目安となる省エネ企業ランキングのようなデータを公表してほしい」と中上所長は提案。行政による指導より、競合他社との省エネ競争に持ち込むことは、確かに大きな推進力となりそうだ。

浪費型世帯と省エネルギー型世帯のエネルギー消費比較 全国2000世帯の調査から割り出したエネルギー浪費型世帯と省エネルギー型世帯のエネルギー消費の差。浪費型世帯は、「自分がエネルギーを浪費している」という意識が薄く、意識の差が省エネ行動に直結していることがわかった。出所:住環境計画研究所調べ

 また、太陽光(PV)やLED(発光ダイオード)、風力などの新エネルギーの活用が進む一方、消費行動という〝出口〟での省エネを伴わないと、全体としてのエネルギー消費、CO2排出は減らないのも事実だ。

「新エネ・省エネはぜひ、両面から進めていただきたい」(中上所長)

 

※「週刊ダイヤモンド」9月25日号も併せてご参照ください。
※この特集の情報は2010年9月21日現在のものです。