有料老人ホームの数は介護保険が始まってから爆発的に増えた。そのなかでも、元気なときから入居できて、それまでの生活から比較的スムーズに移行できる入居時自立型のホーム。そんな自立型の有料老人ホームのメリットと選択時のチェックポイントを、シニアライフ情報センターの小瀬有明子研究員に聞いた。

 

シニアライフ情報センター 小瀬有明子研究員 おぜ・ゆめこ 奈良女子大学卒業。流通系の研究所に在籍後1992年より、高齢者の住居に関する情報と相談活動を実施するNPO法人シニアライフ情報センターに所属。高齢者の住まいに関するセミナー・シンポジウム、調査・研究などを通して市民の立場で情報を提供し続ける。同センター発行の機関誌『シニアライフ通信』ほか専門誌等に執筆。スタッフ共著に、『ケアハウスガイド』(中央法規出版刊)等がある。

 有料老人ホームは大きく分けて4種類ある。一つは今回紹介する「入居時自立」型。介護を必要とせず自立して生活できることが入居の条件になる。二つ目は介護が必要な人も受け入れる「入居時(介護・自立)混在」型。三つ目は「要支援・要介護」型。そして四つ目は要介護1以上が入居条件になる「介護専用」型がある。また、各ホームの提供する介護サービスによって「介護付き」と「住宅型」がある。

 介護付き老人ホーム入居時自立型の場合(入居時は自立が前提)、入居後に介護が必要になれば施設内で介護を受けることができる。看護や介護のスタッフが常駐し、協力医療機関を付設しているところもあり、専用の介護居室を用意している施設も多い。では自立型は、混在型や介護専用型の有料老人ホームと比べて、何がどう違うのだろうか。

シニアライフの拠点として

 シニアライフ情報センターの小瀬有明子研究員は、自立型のメリットをこう語る。

「入居時自立型の有料老人ホームの利点は、比較的元気なうちに入居するので、それまでの生活を引き続き維持できるし、施設内のコミュニティにもなじみやすい。スタッフとも長いあいだの付き合いとなるので、身体状況の変化にも気づいてもらえ、介護が必要になっても適切な世話を受けることができる。健康に気を配った食事や、運動を中心とした各種のイベント、また介護予防に力を入れている施設もあり、心がけ次第で健康状態を良好に保つことが可能になります。万が一のときの医療体制も整っているところが多いので、安心です」

 一方、自立の人が介護を重視する施設に入った場合は、気分が落ち込んでしまった、というケースも少なくない。その点、自立型の入居者は、元気な人が多いため、セカンドライフの拠点として、生き生きと有意義な生活を送ることができるのだ。

 また、ほかの有料老人ホームと比べて、居室の面積が広いのも特徴の一つ。たとえば介護専用型ホームの居室は1人用16平方メートル前後が多く、設備はトイレと洗面台のみが設置されているというシンプルなものが多い。

 一方自立型は、30~40平方メートル以上のものが多く、キッチンなどの設備も整っていて、一般のマンションの居室と比べて遜色がない。

 数年前までは高専賃(高齢者専用賃貸住宅)の人気が高かったが、住み替えが1度ですむ自立型の有料老人ホームを希望する人が増えているという。