経済環境の激しい変化のなかでマーケティングの重要性が語られる機会が増えている。だが日本では依然、独立したマーケティング部門を持っている企業はさほど多くない。日本はマーケティングで欧米に立ち遅れているのか――。じつは必ずしもそうではない、というのが米国の専門家の意見だ。国際的規模でマーケティングカンファレンス「ad:tech(アドテック)」を主催するスーザン・マクダーミッド氏とポール・ベックリー氏に聞いた。
欧米で高い評価を受けている日本のデジタルマーケティング
――顧客ニーズをより高い精度で把握し、適正な生産量と在庫をもって販売効率を上げたい、という企業動向がますます顕著です。
Susan MacDermid
ad:tech シニアバイスプレジデント
デジタルマーケティングセクター
マクダーミッド:多くの企業、そして一般の個人までもが、マーケティングの重要性に気づき、注目するようになりました。なかでも最も熱く語られているのが、ITツールを活用したデジタルマーケティングです。
ベックリー :「デジタル」という言葉が付くことで、なにか特殊なもの、あるいは非常にテクノロジー寄りのものだと誤解する人もいるようです。
しかし、私たちはデジタルマーケティングを特殊なものだとは考えていません。現代という「デジタルの時代」にふさわしいマーケティング。それが「デジタルマーケティング」の正しい定義だと思います。ポイントとなるのは3つの要素です。
(1)マスメディア (2)PC (3) モバイル、これらをいかにインテグレート(統合)しながらマーケティングを展開するかが企業の課題です。
マクダーミッド: 新しい可能性として注目すべきポイントも次の3つに分けられます。(1)サーチ(検索) (2)ソーシャル(SNSなどのメディア) (3)モバイル です。
Paul Beckley
ad:tech バイスプレジデント
テクノロジー(アジアパシフィック)
――米国と比べ、日本のデジタルマーケティングの状況をどのように見ていますか?
マクダーミッド: 日米の現状を、実際に行われているマーケティング活動で見ていくと、日本ではまだまだテレビCFなど、マスメディアに力を入れているケースが多い。一方、米国では本格的にデジタルメディアの活用が強まっていると思います。
ただし、モバイルを活用したマーケティングについては、間違いなく日本が世界で最も進んでいます。
以前北米で、ディーツーコミュニケーションズの前社長である藤田明久氏や日本コカ・コーラの江端浩人氏にモバイルマーケティングのワークショップをお願いしたことがあるのですが、そのとき参加した米国企業の幹部は皆「感動を覚えた」とまで口にして絶賛していたんです。