ベックリー:どうも日本のマーケティング関係者や、企業経営陣のあいだでは「日本は欧米に比べて遅れている」という自己評価が多いようですが、そんなことはありません。しかも、日本が優れているのは、モバイル関連のテクノロジーばかりではありません。
米国や欧州では、以前から日本のクリエーティブのクオリティを賞賛する声も高いのです。その理由の一つは、日本のコンシューマーが、他のどの国よりもソフィスティケート(洗練)されている点にあると思います。
ただ単に「安い!」と表現するだけでは消費に結び付かない。そんな厳しいマーケットだからこそ、クオリティの高いクリエーティブが生まれているのだと考えます。
顧客ともっと深く、広く、長くつながるための基盤づくりを
――とはいえ、日本ではまだまだ、マーケティングは営業活動の一部といった認識で見られることも多いですが、この点で欧米に学ぶべきことは何だと考えますか。
マクダーミッド:もしも日本のマーケティングが米国などから学び取るべきものを一つ挙げるとすれば、私はロイヤルティマーケティングだと考えます。
たしかに日本ではモバイルの活用が進み、高水準のクリエーティブがつくられています。しかし、コンシューマーと、もっと「深く」「広く」「長く」つながっていくようなマーケティングを今後はよりいっそう展開すべきではないでしょうか。
米国企業のいくつかは、このロイヤルティマーケティングの局面で、デジタルメディアをうまく活用しています。
1人のコンシューマーが単にその企業の商品を購入するだけで「企業とのつながり」を終わらせるのではなく、たとえばブログやフェイスブックなどのソーシャルメディアを通じて、リコメンドや感想を発信してもらう。
そうした現象を生み出すような取り組みによって、企業ブランドをより深く浸透させ、長期的に支持を得ていくことを実現しようとしているのです。
ベックリー: あらゆるビジネスがグローバルを前提に行われているのですから、当然のごとくデジタルマーケティングもまた世界目線でチャレンジしていく必要があります。企業とコンシューマーの「つながり方」を追求するうえでも、私たちマーケティングに携わる人間が国境や立場を越えて横に「つながる」ことが、大きな価値を生み出すのだと思います。
先ほども言ったように、日本には世界に誇れる先進性や優位性があります。一方で、海外の諸地域にもそれぞれ優れた価値が実在する。国際カンファレンスなどを通じて、どんどん積極的に横のネットワーキングを広げ、新しいマーケティングの可能性をかたちにしてほしいと思います。