ロジスティクス改革の"進化"が具体的な姿を見せ始めた。キーワードは「3PLのさらなる深耕」と「LLPへの発展」だ。ロジスティクス業界においてそうした動きの先陣を切る三井倉庫ロジスティクスの取り組みから明日のロジスティクスが見て取れる。
「ロジスティクス業界における革命」ともいわれた3PL(Third Party Logistics)。ロジスティクス企業が顧客企業に代わって最も効率的な物流およびそれを支える情報システムを設計し、それらの運営と管理を包括的に受託することをいう。3PLの提供には物流についての深い知識と経験、システム構築力が求められ、ロジスティクス業界では今なお3PLを極める試みが続いている。
そうした中にあって、次なる進化といえるのがLLP(Lead Logistics Provider)だ。その成約案件が日本でも出始めた。LLPは3PLよりも顧客企業のビジネス領域に深く踏み込んだもので、3PLとして提供する物流のオペレーションや管理に加えて、顧客企業のSCM(サプライチェーン・マネジメント)戦略とロジスティクス企画やビジネスプロセス構築も支援する。
つまり顧客企業のサプライチェーンおよび物流と在庫、情報を全体最適化するための統合的なアウトソーシングサービスだ。
顧客のビジネスを支え、
社会的価値を生み出す
代表取締役 社長執行役員
石田幸男
「ロジスティクス企業間の競争は、個々の顧客企業に対するサプライチェーンソリューションの提案・構築に加えて、業界全体や社会に資するプラットフォームを提案・構築できるかどうかの領域に入ったと考えています。当社においては、特に製・配・販連携のロジスティクスプラットフォームを構築すべく活動しています」
三井倉庫ロジスティクスの石田幸男・代表取締役 社長は、こう語る。
つまり、製造(製)、流通(配)、販売(販)の各部門における物流、在庫、情報の在り方を見直し、それらをシームレスにつないで最適化するための共同・協働の仕組み作りだ。そうした統合プラットフォームの構築をリードできない限り、今後はロジスティクス企業としての発展が望めないと石田社長は言う。
前掲の通り、通常LLPのPはProviderであるが、三井倉庫ロジスティクスでは、顧客企業と同じ目線でそのSCM改革の伴走者となることや、顧客企業と共にロジスティクスプラットフォームを構築していくことを強く意識し、PをPartnerとしている。
三井倉庫ロジスティクスとLLPの取り組みを行っている欧州のコーヒーマシンメーカーは、日本マーケットにおいてエスプレッソ型フルオートマチックマシーンのビジネスを拡大させている。昨今、同マーケットはコンビニエンスストアなどのメガリテーラーを中心とする変革期に差し掛かっており、メーカーには従来とは異なる対応が求められている。そのために、調達、製造から販売、アフターサービスに至るSCM(サプライチェーン・マネジメント)全般での改革や、それを支えるチェンジマネジメントが必要となっているのだ。
これに対して、三井倉庫ロジスティクスは、製品やサービスパーツの調達から保管、配送、設置・工事、修理、検査、保守、コールセンターなどのサービス提供はもちろんのこと、メーカー及びリテーラーのニーズに応じて商流機能の提供も行う。また、製品開発におけるIoT機能の付加についても、リテーラーのニーズを汲み上げながらメーカーと協議を重ね、リテーラーに対してはメーカーとの共同提案を行っている。
メーカー(製)とリテーラー(販)双方のニーズを満たすために、三井倉庫ロジスティクスが部分的にディストリビューター(配)の役割を担う形での、製・配・販連携プラットフォームの一例だ。
「今回、私たちは、お客さまのSCM改革に欠かせないチェンジマネジメントを支援するパートナーとして、ご評価いただいたものと考えています」(石田社長)