たいがいの人が、新渡戸稲造の名前はご存じだろう。しかし残念ながら、彼が何者かを知る人は少ない。1920年代、第一次世界大戦後に創設された国際連盟の事務次長として、フィンランドとスウェーデンの間にあるオーランド諸島の帰属をめぐる紛争を平和裡に解決させたことは、新渡戸の代表的な業績である。 もう一つ、『武士道』を著したことである。セオドア・ローズベルトはこの『武士道』に大いに共感し、日露戦争の講和に尽力した(その功績によりノーベル平和賞を受賞)。同じくジョン・F・ケネディ大統領も、『武士道』を座右の書の一つに挙げている。日本の産業界に目を移せば、東京通信工業(現ソニー)初代社長の前田多門氏は東京帝国大学時代より新渡戸に師事した。彼の後を襲った井深大氏も新渡戸に私淑し、『武士道』の熱心な読者であったという。
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