「日本の200年――徳川時代から現代まで」の著者として世界的に有名なアンドルー・ゴードン教授。本書は、世界各国の大学で「日本の近現代史の教科書」として活用されている。ハーバード大学の日本史の授業では、「世界との関わりの中で日本史を見る」ことを徹底的に教える。ゴードン教授が授業で「新渡戸稲造」「岡倉天心」「ラビンドラナート・タゴール」を取り上げているのはなぜなのだろうか。(2017年4月18日、ハーバード大学にてインタビュー)
日本が世界に与えた影響
佐藤 日本史の授業「アジアの中の日本、世界の中の日本」では、長い歴史の中で日本が世界に与えてきた影響についても教えています。
ゴードン 19世紀ごろまでは、日本は世界にそれほど大きな影響を与えていなかったと思います。奈良時代から日本は中国や韓国と貿易していましたし、使節も送っていましたが、それらはもっぱら両国から様々な制度や文化を取り入れることを目的としていました。日本が両国に与えた影響は限定的だったと思います。
ところが19世紀の明治維新以降、様相は一変します。ヨーロッパの人たちが日本の文化や芸術に価値を見出しはじめるからです。
授業では、1920年代の「モダンガール」を調査した研究についても教えていますが、それを見ると、欧米とアジアがお互いに影響し合っているのがよくわかります。つまりファッションは、欧米からアジアへと一方的に入ってきただけではなく、日本や中国のファッションもまた欧米に影響を与えていたのです。文化の伝播は一方的ではなく、複数の方向性を持つことを物語る資料です。
佐藤 19世紀から20世紀にかけて、日本の文化が世界を席巻したということですね。
ゴードン 日本文化は、西洋の知識人の好奇心を刺激しました。政治、経済よりも、日本は芸術、文化、思想で海外に影響を与えてきた国なのです。