AI を搭載した全く新しいレジスター「ワンダーレジ」が、電気通信大学(東京・調布市)の生協にお目見えした。通常のレジの端に置かれたワンダーレジに学生たちは興味津々。画像認識の方法に戸惑いながらも、購入にチャレンジする姿が目立った。ショップ側は、昼時の混雑軽減のため強力なツールとして期待している。

電気通信大学のコープショップに置かれた「ワンダーレジ」

 電気通信大学構内にあるコープショップ。今年、7月31日から「ワンダーレジ」が登場した。大学は試験期間中で、コープショップには常時学生の姿がある。稼働スタートはピーク時を避けて、15時〜18時のアイドルタイム(客数の少ない時間帯)に行われたが、出入りする学生たちは積極的に「ワンダーレジ」を試そうとしていた。

 「ワンダーレジ」は、システムソリューションを提供するサインポストが開発した、AIを搭載した新世代のレジスターである。購入したい商品を「ワンダーレジ」のテーブルに置くと、カメラが商品の特徴的な要素を見つけ出して認識。脳の神経回路にヒントを得たAIが、ディープラーニング(深層学習)を利用して商品を識別してゆく。その情報が、あらかじめ登録された商品に紐付けされて、電子マネーで決済できるという仕組みだ。

 サインポストでは3年半前に開発プロジェクトチームを立ち上げ、電気通信大学の柳井啓司教授の協力を得て共同研究を行ってきた。今回、真っ先に電通大の生協に設置されたのは、そうした背景がある。

コープショップの高橋伸嘉店長

 「想定以上に学生たちが興味を持って使ってくれています。商品の置き方によってまだうまく認識できない時もありますが、可能性を感じますね。10月からの新学期には、夏休み明けで来店客が増えますので、昼時ピークタイムの混雑軽減に役立つのではないかと期待しています」

 と語るのは、電気通信大学生活協同組合コープショップの高橋伸嘉店長だ。

人手不足の解消や
ピーク時の機会損失を軽減する

 「ワンダーレジ」の特徴は、人間(従業員)を機械(AIレジ)に置き換えるだけというシンプルさにある。ICタグを使った決済システムと違い、タグを付ける手間やコストがかからず、既存のPOSシステムを使えるのが強みだ。導入のメリットは、小売店鋪における人手不足の解消や、人件費の削減、レジ待ち時間の解消のほか、ピーク時の機会損失を減らした売上げ増などが考えられている。

リケジョたちも興味津々

 今回の導入を担当するサインポストイノベーション事業部の波川敏也氏は、「今回の導入には、システム面や使い方を含めた、実店舗における最終確認の意味もあります。商品の置き方で認識しづらいケースもありますが、データを蓄積し学習させることで、画像認識の精度は上がっています。操作自体が全く新しいために戸惑いもあると思いますが、抵抗なく使われているようです」

 と手応えを語る。情報理工学を主体とする大学だけに、AIを利用した機器への興味が強く、クローズドな環境が導入スタートをより効果的にする要素になっているようだ。