金本知憲、高橋尚子といった有名アスリートたちが身に着けている布製のネックレスをご存じだろうか。あのネックレスに使われているのが、チタンを水溶化した「アクアチタン」だ。最新のナノテクノロジーにより生まれたこの新しい素材に、航空会社や衣料メーカーなどさまざまな企業が注目。新たな商品やサービスを展開している。

京都府立医科大学学長
ルイ・パストゥール医学研究センター研究所長
吉川敏一氏
日本におけるアンチエイジングの第一人者として知られ、「不老革命!」(朝日新聞出版)など著書多数。アクアメタル研究会の代表を務める。

 最新のナノテクノロジーにより生まれた新しい素材・アクアメタル。特に生体親和性がよいとされるチタンを水溶化したアクアチタンは、以前からリラックス効果など人体への作用が指摘されてきた。

 名だたるトップアスリートたちがこのアクアチタンを使ったネックレスをこぞって愛用するのも、そうした効果を求めてのことといえよう。

 しかし一方で、その作用機序については明らかになっていない部分が大きい。このメカニズムを科学的に解明すべく設立されたのが、京都府立医科大学学長の吉川敏一氏が代表を務める「アクアメタル研究会」だ。米UCLAをはじめ世界各国の大学でアクアメタルに関する研究が進められている。

 

世界各国のアクアメタル研究者が
最新レポートを発表

米UCLA歯学部教授
小川隆広氏
昨年、歯科で最も権威ある賞の一つ、William J.Gies賞を受賞。これまでにインプラント、再生医療、生体材料に関する論文を120本以上発表。

 同研究会ではさる10月8日、今年で第3回となる研究者シンポジウムを開催。この1年のアクアメタルに関する研究の成果が発表されるとあって、会場には230人以上の関係者やメディア、企業担当者などが集まった。

 研究テーマは多岐にわたり、アクアチタンについては従来いわれてきたリラックス効果に加え、運動パフォーマンスの向上、疲労回復や痛みの緩和ケア、またインプラントや再生医療への応用など、最新の実験データをもとに多様な可能性が示された。

 こうした科学的な検証作業と並行して、ビジネスの現場でも、アクアチタンは注目を集めるようになっている。

 

 

【研究データが示した広がる可能性】

シンポジウムでは第一線で活躍する研究者たちがこの1年の研究成果を発表。特に小川氏が論じた再生医療への応用については、吉川氏も「医療材料としての開発は新たな可能性。次回はより大きな成果を発表できるのでは」と期待を寄せた。独ブラウンシュバイク工科大学のマーチン・コルテ教授によれば、アクアチタンが脳の神経細胞・ニューロンに働きかけ、痛みの軽減やストレスの減少に役立つというデータも。さらなる検証が待たれる。