KDDIの法人向けオンラインイベント「KDDI BUSINESS SESSION 2020 online」が2020年10月9日に開催された。代表取締役社長の髙橋誠氏が5G(第5世代移動通信システム)時代における同社の未来社会構想を紹介した他、3人の執行役員が「ともに、新しい世界へ」をテーマに、ニューノーマル時代におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の可能性について語った。

3つのレイヤーで、新しい社会基盤の創造に貢献

 イベント冒頭のスペシャルセッションには、KDDI代表取締役社長の髙橋誠氏が登場し、「KDDI Accelerate 5.0 ~Society 5.0を5Gで加速する、レジリエントな未来社会を目指して~」と題し、同社とKDDI総合研究所が2020年8月31日に発表した未来社会構想「KDDI Accelerate 5.0」について紹介した。

 髙橋氏は、「サイバー空間とフィジカル空間との間でデータが循環するSociety(ソサエティー)5.0の世界の実現を、5Gで加速させること」が、構想の大きな狙いであると説明。その実現のため、5Gを中心とした①ネットワーク、②セキュリティー、③IoT(モノのインターネット)、④プラットフォーム、⑤AI(人工知能)、⑥xR(仮想空間技術)、⑦ロボティクスの7つのテクノロジーの研究・開発やサービス化を推進していくことを宣言した。 

KDDI株式会社
代表取締役社長
髙橋 誠

 併せて、「従来の専門領域であるネットワークに加え、プラットフォーム、ビジネスの3つのレイヤーで、新しい社会基盤の創造に貢献していく」と述べ、各レイヤーの今後の取り組みについて解説した。

 ネットワークレイヤーでは、5G基地局数を21年度末に約5万局まで増やし、今後リリースするスマートフォン全機種の5G対応化、使い放題料金プランの設定、新たな体験価値の提供などを進めていく方針を示した。また、「法人向けに最適な5G環境を提供するため、パートナー各社の知見も活用して新たなサービスを創出したい」(髙橋氏)との考えから、「KDDI 5Gビジネス共創アライアンス」を組成したことを発表した。

 プラットフォームレイヤーについては、海外ではパブリッククラウドやMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)ソリューションでの協業、国内ではグローバルIoTプラットフォームでの協業などを通じて、「日本の未来社会システムの構築を支援する」と述べた。具体的な取り組みとして、20年中にAWS(アマゾン ウェブ サービス)とのコラボレーションによる、超低遅延のエッジコンピューティングプラットフォーム「AWS Wavelength + 5G MEC」をリリースすることを発表した。

 ビジネスレイヤーについては、法人顧客の5Gビジネス開発拠点である「KDDI DIGITAL GATE」、大企業とスタートアップの事業共創を支援するベンチャープログラム「KDDI∞LABO(ムゲンラボ)」などの活動について紹介。「オープンイノベーションの場を提供することで、日本のDXを加速させていきたい」と語り、同社が技術支援した代表的なDXの事例を紹介した。

 さらに、12月にはニューノーマル時代のライフスタイルの提案に向けた研究拠点「KDDI research atelier」を東京・虎ノ門に開設することを発表した。同じ地域にある「KDDI DIGITAL GATE」、「KDDI法人部門 虎ノ門新拠点」を含む3つのオープンイノベーション拠点を連携させ、ニューノーマル時代を生き抜くためのDXはもちろんのこと、Society 5.0の実現に向けた取り組みをより加速させていく構えだ。

 最後に髙橋氏は、「Society 5.0のど真ん中に5Gを置き、パートナー企業と手を携えながらレジリエントな未来社会の創造のために貢献していく」と締めくくった。

経営の足腰を強くするコーポレートDXの実践を

KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部
サービス企画開発本部長
藤井彰人

 続くメインセッションでは、まずKDDI 執行役員の藤井彰人氏が登場し、「ニューノーマル時代に適応するコーポレートDX ~これからの『働く』をつなぐために~」と題する講演を行った。

 藤井氏は、IDC Japanが行った企業へのアンケート(※)で、新型コロナウイルス感染拡大後の課題として、「働き方改革」「セキュリティー強化」「日々の業務プロセスの変革」などが上位に挙がったことを報告。「いずれも目新しい課題ではなく、多くの企業においてビジネスの足腰である基盤が強化されていなかったことが明らかになった」と分析した。
※IDC Japan「2020年 国内企業のIT投資におけるCOVID-19の影響」

 その上で、事業のDXのみならず、「働き方」や「業務プロセス」を変革する「コーポレートDX」の必要性を訴え、KDDIの各サービスの部門長とともに、同社がコーポレートDXのために提供できるテクノロジーやサービスについて紹介した。