浅野工学専門学校は、明治のセメント王と呼ばれた浅野總一郎が1929年に創立して以来、85年の歴史を有する。この間、建築やコンクリート関連の企業に多くの有能な卒業生を輩出してきた。実務・実習に特化したカリキュラムと強力な就職支援によって、現在も高い就職率を誇っている。

浅野工学専門学校
中村正明校長

 神奈川県横浜市にある浅野工学専門学校は、1929(昭和4)年の創立以来「勤労・奉仕・勉学」を建学の精神とし、「即戦力」として社会で働ける人材を養成し続けてきた。

 現在、同校には建築工学科(4年制・4クラス)と建築デザイン科(2年制・2クラス)の2学科がある。いずれの学科も、文部科学省が2014年4月から始めた「職業実践専門課程」(最新の実務知識や技能を盛り込み、実践的な職業教育に取り組む学科)の認定を受けている。

 しかし、同校の理事で、建築設計製図などの科目で教鞭も執る中村正明校長は、申請書類の作成を除けば、特段の準備や投資を要さなかったと語る。

「従来から、職業実践専門課程の認定に求められる『実践的』なカリキュラムや指導にこだわってきました。二つの学科とも、低学年から上級学年に進む際に、実習・演習型科目を基礎から実務を中心にして開講しています。また、特別講座という科目(建築工学科3年次)では、企業の第一線で活躍する人々を招いて、最新の現場の話や企業ニーズなどを講義してもらっています」

業界や社会ニーズに
マッチしたカリキュラム

 同校の建学以来の伝統である、卒業後に企業の要望に応えられる“即実践力”を身に付けた人材を社会に送り出すという実務教育の賜物と言えるだろう。

 同校では、即実践力の養成に力を入れている。例えば「オフィスアプリケーション実習」という科目は、実習を通して建築実務に欠かせない書類(見積書・報告書他)、計算書(構造計算・積算他)作成業務のための基礎的科目として、1年次に開講(建築デザイン科)。

「見学会は実習型科目に限らず、デザイン系科目でのショールーム見学や新建材展示会など、講義型科目でも積極的に実施しています。また、直近の現場見学では、隣接する浅野中学・高等学校の体育館・図書館(鉄筋コンクリート造)新築工事の主要工事を継続的に見学。震災後の防災意識が高まっていることもあり、耐震関連の展示会にも引率しました」(中村校長)

 一方で、昔ながらの技法でも現場で重視されているものは、きちんと伝えている。

浅野工学専門学校 就職部部長 加藤直樹教授 博士(工学)

「設計の基礎となる製図では、もちろん最新のCADについても教えます。しかし、現場などでは、体で覚える手書きによる製図技法も必要と考えられます。そのため、手書きでも作成できるような指導を心掛けています」(中村校長)

 また、建築に関する原材料の変化などにも即応してきている。コンクリート工学などの科目を担当する加藤直樹教授は次のように語る。

「コンクリートの材料の砂と砂利は、現在は国内の山砂と共に輸入品にも多くを頼っており、昔よりやや質が落ちました。それを良質なコンクリートに仕上げる技術が求められています。本校ではコンクリート工場と同様の実験機器、設備があり、それらを駆使して技術や勘所を緻密に教えています」