「働き方改革」のひとつとして、テレワークを導入する企業が増えている。しかし、持ち運びできるノートPCやタブレットで仕事をするとなると、データの紛失や流出といった問題も起こりやすく、万全なセキュリティ対策が不可欠だ。官公庁や企業向けにセキュリティソリューションを提供するソリトンシステムズに、テレワーク推進のためのヒントとセキュリティ対策の重要性について聞いた。

(写真はイメージです)

なぜ進まない? 日本のテレワーク

 2018年6月29日に関連法案が成立し、いよいよ本格的な動きとなりつつある「働き方改革」。その方策のひとつとして注目されているのがテレワークだ。

 一般社団法人 日本テレワーク推進協会によれば、テレワークの定義は「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」。つまり、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末を使って、自宅や社外に設けたサテライトオフィス、喫茶店など、どこでも自由な時間に働けるワークスタイルである。

 たとえば育児休暇や介護休暇中の社員でも、自宅に居ながらウェブ会議に参加し、ネット経由で会社のシステムにアクセスすれば、オフィスにいるのと同じように業務を処理できる。会社にとっては人材の有効活用に結び付き、社員には「働きやすい環境」が提供できる。今日のように人材難が深刻化している状況では、「働きやすい会社」としての制度と仕組みを整備することが、人材獲得の有効な手段にもなるはずだ。

「忙しい営業担当者が外出先や出張先からテレワークできる環境を整えれば、営業先からわざわざ会社に戻る時間が減らせるので残業代の削減や業務の効率化が実現しますし、社員も時間を有効に使えるのでワークライフバランスが取りやすくなります。育児や介護の問題を抱える女性に活躍の機会を提供することだけに焦点が当たりがちですが、テレワークは会社全体の生産性を底上げし、すべての社員に働きやすさを提供する解決策なのです」

ソリトンシステムズ ITセキュリティ事業部
新井ひとみ・プロダクトマネジャー

 そう語るのは、ソリトンシステムズのITセキュリティ事業部プロダクト部の新井ひとみ氏である。同社は数多くの官公庁や企業に多彩なITセキュリティソリューションを提供していることで知られ、国が進めるテレワークの普及活動も応援している。

 国は国際競争力強化策の一環として、企業にテレワークの導入を促している。その積極的な啓蒙活動によって、テレワークのメリットに関する認知は広がっており、導入企業も少しずつ増えている。

 しかし、「総務省の『平成29年通信利用動向調査』によると、テレワークを導入していると答えた企業は全体の13.9%にとどまっています。大企業では導入事例が増えていますが、中堅中小企業ではあまり普及が進んでいないのが実情です」と新井氏は語る。

「メリットは理解できるけれど、いざ始めるとなると、何から手を付ければいいのか、どうやって進めていけばいいのかがわからない。また、制度を整えていくにはテレワーク対象者の適用範囲や労務管理等のルール決めが不可欠ですが、そもそも『何のためにやるのか?』という目的が不明確であるため、社内の論議がまとまらない企業も多いようです。

 まずは『社員の採用や定着を促す』『業務効率や生産性を上げる』といった経営上の目的を明確化して、そのためにはどういう仕組みを採り入れるべきか、と順序立てて考えていくことが重要ではないでしょうか」
と、新井氏はアドバイスする。