金融緩和を中心とする政府の経済政策に反応して、景気回復への期待感が高まっている。企業立地においても、長らく続く低迷からの脱却が期待されるが、厳しい立地環境の下でも戦略的に設備投資を行う企業や、近い将来に向けて立地を計画する企業は少なくない。最近の企業立地の動向や特徴を見ていこう。
(日本立地センター専務理事 德増秀博)

 

 政府では、各種の施策や予算措置を講じて立地の下支えをしているものの、長引く景気の低迷や円高の影響などで、国内企業立地は依然として低水準にある。

 また、製造業の海外進出、とりわけ新興国への生産機能のシフトが続いているが、こうした現地生産体制の構築は、グローバルな競争下での合理的な選択の結果であるといえる。もちろん、多くの企業は国内立地の重要性を認識しており、マザー工場や研究開発拠点を国内に残し、競争力の向上を図っている。

国内投資意欲は健在
早期立地を目指す傾向も

 製造業は国内立地をどのように考えているのか。日本立地センターが2012年10月に実施した「新規事業所立地計画に関する動向調査」の結果で見てみよう。

 調査票を回収した3040件のうち、新規立地計画が「ある」と答えた企業は373件で12.3%を占める。この割合は前年度の調査と同率を維持した。また、「新設」(38.9%)が年々増加傾向にあり(図1参照)、計画の対象となる施設は「工場」が大多数(88.5%)を占めている。また、新規立地計画の進捗状況は、「検討中」が32.4%で最多だった(図2参照)。

 立地の候補地域は、「南関東」(17.7%)が前年度まで7年連続トップの「東海」を抜いて最多となった。また、「海外」(15.0%)は前年度に続いて増加しており、特に加工組立型や基礎素材型で高い傾向が見られた。

 新規立地の予定時期は「3年以内」(22.8%)が最多だが、「着工中」「早急に」が増加しており、より早期の立地を目指す傾向が強まっている。