跡見学園中学校高等学校
松井真佐美校長

「今の世の中は実学志向が強いように思います。でも、それだけでは必ず行き詰まる。ですから、引き出しをたくさん持っていてほしいのです。たとえ一度も開けなくても、持っているだけで人生の軸を支えてくれると思うのです」

 跡見学園中学校高等学校の松井真佐美校長はそう語る。自身も中高を跡見で過ごした。

 同校では、「本物」に触れる学びが多い。その一つが創立以来続く芸術教育だ。音楽、美術、工芸、書道といった芸術科目の充実に加え、課外授業でも茶道、箏曲(そうきょく)、華道を専門家から学ぶ。制作に力を入れ、陶磁器を焼く窯もあるほどだ。毎年、会場を貸し切って行う芸術鑑賞会は、2025年はオーケストラ、26年はウィーン少年合唱団を予定。美意識を磨く環境がある。

 探究学習も同じ思想だ。中1の理科では校内の桜を使い、開花の仕組みをスケッチと実験で学ぶ。中学の宿泊行事は、北軽井沢や日光・尾瀬で自然に親しみ、広島、長崎や沖縄で戦争や平和の記憶をたぐる。

 高2は訪問先を事前に学び、旅の内容を自分で作る「セルフプロデュース旅行」に行く。行き先をまとめた自作の小冊子をガイドに渡し、自分たちが知りたいことを軸に案内してもらう生徒もいる。「感受性の強い時期に、体験という種をまいて、生徒たちが面白いな、やってみたいなと思うものを見つけ、これからにつながっていく。それが本来の探究の姿ではないかと思います」(松井校長)。

 実際、東京藝術大学から医学部まで、進路先は幅広い。体験で出合った自分の「好き」で、それぞれの道を切り開いていく。

「あね・いもと」が紡ぐ
学年を超えた深い絆

 酷暑を機に、25年から体育祭を代々木第一体育館へ移して開催した。全校生徒約1400人の移動から準備体操の内容、種目の立案、審判の割り振りまで、生徒が運営の全てを担った。「大きな学校行事を自分たちで動かすなんて、なかなかない経験でした。試行錯誤しながらもやり切ることができて、うれしかったのではないでしょうか」と松井校長は振り返る。

 生徒たちのこうした行動力を支えているのが「あね・いもと」の校風だ。中1から高3まで全学年がクラブや生徒会などで共に活動する中で、上級生と下級生の間に姉妹のような深い絆が育まれ、受け取ったものを次の世代へと手渡す流れが自然に生まれる。

 絆は卒業後も続く。医学部の推薦入試を目指す在校生に、医学部に進学した卒業生2人を校長が引き合わせた。面識はなくとも卒業生たちはすぐに応じ、経験を惜しみなく伝えた。「跡見の子だから、教えてあげようとおのずと思うのでしょう」。

 25年秋に稼働した新しい多目的施設は、校内のケヤキの木を使ったテーブルがしつらえられ、生徒が「ケヤキ棟」と名付けた。面談室、自習室のほか、生徒が憩うラウンジも設けられた。この場所でも「あね・いもと」が紡がれていく。

「ケヤキ棟」に設けられたラウンジの様子。3階建ての建物には、他に、生徒たちが自由に使える自習室や教職員との面談室も入っている
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