五島德之校長
「進みゆく世におくれるな、有為な人間になれよ」。 淑徳中学校・淑徳高等学校は、校祖・輪島聞声(もんじょう)の理念を核とした、創立130年超の伝統校だ。仏教の不易の教えを基盤とした学校でありつつも、その教育の歩みは常に先進的だ。
2025年度に着任した五島德之校長は、同校で40年以上教壇に立ち、学校の変遷を間近で見てきた。革新的な取り組みの歴史について、「男女共学化は35年前。生徒全員にタブレットを持たせ、卒業論文発表(現・探究活動の発表)を保護者の前で披露することも十数年前から行っています」と語る。特に、全クラスで1年間留学する「留学コース」は36年目、英国・米国でのサマーキャンプは45年目を迎える。この革新性を支えるのが、仏教精神に基づく「心の教育」である。
朝のお勤めや年4回の仏教行事を通し、お釈迦様の教えを日常生活に役立てる形で伝えている。例えば、日本語の「ありがとう」が仏教の「有ることが難しい(有り難い)」からきていることを示し、目の前の「当たり前」が、いかに素晴らしいかを説く。
こうした「心の教育」は、具体的な実践目標として掲げられている。中学校では「感謝の心を忘れない」「思いやりの心を持つ」「礼儀を守り高い知性を身につける」という三つの実践目標を唱え、高校では「三つのL(Life・Love・Liberty)」を教育の土台としている。
保護者の要望で
中学校にも校内予備校が
同校の進学実績は、学校、保護者、生徒の三位一体に、さらに卒業生が加わった独自の「四つの力」体制によって伸長している。26年春の合格実績は東大3人、国公立大49人という確かな実績を上げた。
その核となるのが、同校の卒業生が主体となって運営する校内予備校「淑徳アドバンス」(高校)だ。これは、学校の状況を熟知した卒業生チューターが個別指導や少人数制指導を行う、独自のシステム。16時半までは教員が、それ以降は卒業生が連携し、部活動と重ならない時間割調整や演習量の連携など、きめ細かなサポートが可能となっている。保護者からの要望が高まり、中学校でも25年度から同様の「淑徳プラス」がスタートした。先輩チューターは、親の助言を受け入れにくい思春期の生徒たちにとって、最良の道しるべとなっている。
普段の生徒たちの様子は「何事にも一生懸命に取り組み、活発な学校生活を送っています」と五島校長。先日も、野球部の応援に吹奏楽部やバトン・ダンス部が駆け付け、一体となって応援する姿に校長は「心に響くものがある」と語った。
五島校長は有為な人材を「その人の良さを大事にしながら、立場や時代をわきまえて、人のために、世のために、尽くせる人」と定義する。これは学祖・長谷川良信が大切にした「利他共生」の心を持った人間像と重なるものだ。淑徳の「心の教育」は、生徒たちの未来をしっかりと支えていく。
