中1・中2の2年間で
「ワクワクする学び」へ転換を
全国でも屈指の進学校として知られる海城。そんな海城が今、学校ぐるみで取り組んでいるテーマの一つが「Ⅰ期を創る」だ。
海城では中高の6年間を中1・中2のⅠ期、中3・高1のⅡ期、高2・高3のⅢ期に分けているが、特に土台となるⅠ期には重きを置き、一人一人が海城での生活・学習リズムに慣れ、自律的な学習習慣を身に付けることを目指している。
塩田顕二郎募集広報室長は、新入生の保護者からしばしば「中学生のうちから塾に通った方がいいでしょうか」という質問を受けるというが、一貫して「その必要はありません」と答えるという。
海城の授業は大学受験にしっかりと対応できるプログラムを用意しているため塾は不要であるし、授業内容を定着させるためにも、親の伴走なしに家庭で学習する習慣をⅠ期のうちに確立させることが大切だと考えているからだ。
そして、このⅠ期の2年間で重要なことは、中学受験までの学びの在り方を変えていくことだという。
海城に入学してくるのは、それまで保護者のサポートも受けながら塾の課題をこなしたり、点数や順位・偏差値に一喜一憂したり、といった受験勉強を経験してきた生徒ばかり。塩田室長は「もちろんそれは無理からぬことですが、中学受験の『競争的な学び』から脱して、海城では『ワクワクする学び』をしてほしいのです。保護者の皆さんも、子どもの受験勉強を見ながら、本当はそんな学びを望んでいるはず。せっかく海城に入ったのだから、6年間で新しいことにチャレンジして、人間関係も広げ、豊かな時間を過ごしてほしいですね」と願う。
塩田室長が海城生に6年間を通じて得てほしいと考えているのは「沼にハマる」、つまり時間を忘れて何かにひたすら没頭し、学ぶことの楽しさや喜びを実感する経験だ。
「予測不可能なこの時代、自分自身を一生アップデートするための学びのエンジンが必要です。そんなエンジンを手に入れるためにも、中高時代に興味・関心を持てることを見つけ、学びに没頭する経験を積んでほしいと思っています」(塩田室長)
そんな「沼にハマる」仕掛けが、海城にはさまざまな場面である。日々の授業はもちろんだが、それ以外にも「KSプロジェクト」という、授業外で実施される特別講座も生徒たちの知的好奇心を刺激する。
例えば、デザインに興味を持った生徒が集まった「KAIJO DESIGN TEAM」には中高生30人ほどが参加。シャープペンシルや定規、トートバッグなどの海城グッズを文房具会社の協力の下、イチからデザインした。
他にも音楽室のリニューアルに当たっては、空間デザインに興味のある生徒が音楽室のリノベーションプランを提案。施工業者ともやりとりしながら、生徒のデザインが取り入れられた音楽室が完成した。
こうした、教科や学年の枠にとらわれない特別講座がきっかけとなった学びは他にも、海城の学校生活を発信する英字新聞作り、今や常連校となった俳句甲子園への出場など、多岐にわたる。
「6年間無我夢中になれるものを見つければ、同じ興味・関心を持った先輩や同級生や後輩もいるので、仲間と一緒に勝手に沼にハマっていきます。私たちの役目は、その沼をたくさん用意していざなうことです」(塩田室長)
こうして「沼にハマった」生徒たちの学びのエンジンは卒業後も長く続く。突き詰めたい分野を見つけた生徒が東京大学の推薦入試や海外大学に合格し、さらにその分野を究めていくケースもここ数年で続いている。
自身も海城の卒業生である塩田室長は「生徒たちには社会に出てからはリーダーとなって活躍してほしいですね。実際に卒業生は、自分の力を自分のためだけではなく、社会を幸せにするために使おうという人が多いです。それこそが、海城が掲げる『新しい人間力』と『新しい学力』を合わせた、海城でしか獲得できない力『海城知』だと思います」と、後輩でもある生徒や卒業生たちに期待する。
2027年には新校舎も完成予定。「つなぐ」をキーワードに、既存の校舎や食堂、グラウンドとも行き来しやすい動線ができる。校舎の建て替えも学びの機会と捉え、建設予定地で発見された江戸時代の遺構や、建設工事の現場を希望者が見学できる機会も設け、生徒たちは目を輝かせた。新たな学びの場でも、そこかしこで「沼にハマる」海城生の姿が見られそうだ。
