岩本 正校長
1885(明治18)年創立の、伝統ある男子進学校。同校の教育の根幹にあるのが、校章「三光星」にも示されている「知・仁・勇」の精神だ。岩本正校長は、「しっかりとした知識を得る(知)だけでなく、多様な人々と対話や協働をする(仁)、そして自ら決断し実行に移す(勇)。この三つのサイクルを身に付けていくことで、真の人間力が育つと考えます」と語る。
この精神を体現しているのが、100年以上前から続く「臨海学校」や「林間学校」に代表される実地教育の伝統である。臨海学校では、高2の生徒が中1の指導補助員として同行し、先輩の背中からリーダーシップを学ぶ伝統もある。教室の中だけでなく、実際に現地へ足を運び、五感を通して「本物」に触れることを何よりも大切にしている。近年では、この実践を重んじる姿勢が国内外の社会課題と向き合う独自の探究活動へと進化し、生徒たちを大きく成長させている。
カンボジアの農村で
体当たりの課題解決
その象徴的な取り組みが、高校生の希望者を対象にした「カンボジアキャラバン」だ。約1週間の日程で現地を訪れ、環境問題や現地での働き方などリアルな現状を調査する。例えば農業の視察では、大規模な水耕栽培の現場に入り、「近年は、主食の米より、トマトや葉物野菜の生産の方がもうかる」といった現地の生々しい経済事情を目の当たりにする。
さらに生徒の勇気が試されるのが、地元サッカーチームの集客課題を解決するミッションだ。英語が全く通じない市場に出向き、生徒たちはスマートフォンにクメール語の翻訳画面を表示させながら、体当たりで現地の人々にインタビューを敢行した。帰国後はこれらのデータを分析し、論文にまとめてプレゼンテーションを行う。物おじせずに異文化へ飛び込む経験が、生徒たちにたくましい行動力をもたらしている。
国内に目を向けた「地域探究」でも、成城らしい実地での学びが貫かれている。高校生を対象とした1泊2日の福島県浜通りエリアの訪問では、南相馬市内や双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館、浪江町の請戸(うけど)小学校などを見学。現地に同行した岩本校長は、「生徒たちは震災の記憶がなく、だからこそフラットな視点で現実を受け止めていました」と振り返る。
この探究の最大の目的は、「復興」と「キャリア」を結び付けることにある。若い世代が移住し、一度は途絶えたキウイ農家を復活させ起業している様子などを視察。新たなビジネスを立ち上げる若き起業家たちの話を聞くことで、生徒たちは自らの将来のキャリアや、「自分に何ができるか」を深く考えさせられるという。
100年以上変わらぬ本物に触れる伝統と、時代に応じた新たな挑戦が融合する成城。失敗を恐れずに突き進むたくましい男子たちは、多様な価値観に触れながら、次代を切り開くリーダーへと成長していく。
