地域で異なる塾の勢力図
高校受験の仕組みは都道府県ごとに大きく異なり、とりわけ内申点の扱いには地域差が大きい。首都圏だけを見ても、東京と神奈川では私立受験でも内申点が重視されるため、内申点が低いと受験校の選択肢が狭まりやすい。対して、千葉の難関高校受験では公立・私立ともに内申点の比重が低く、埼玉の私立高校でも内申点をほとんど見ない傾向がみられる。
さらに、評価の対象となる期間や換算方法も地域によって異なる。中学3年間の成績を求める地域もあれば、中学3年の成績だけを使う地域もあり、東京都では実技科目の評定を2倍に換算する。
こうした制度の違いは、塾の勢力図にも表れる。その地域で長年実績を積んできた「地域密着型」の塾は、地域特有の入試制度や学校事情に合わせたノウハウを蓄積しており、高校受験では中堅塾や個人塾が高い合格実績を出すケースも目立つ。中学受験や大学受験では大手塾が強い一方、高校受験では地域密着型の塾が存在感を示しやすい。
例えば、埼玉県の「スクール21」、神奈川県の「ステップ」、愛知県の「野田塾」などが代表例だ。これらの塾は、地域特有の入試制度や出題傾向を長年研究し、地元の公立中学の情報にも詳しい。公立のトップ校を目指す場合、こうした地域密着型の塾はまず検討したい。
もちろん、大手塾の存在感も大きい。早稲田アカデミーやZ会、SAPIX、駿台、enaなどは、首都圏の高校受験市場で多くの生徒を集めている。臨海セミナーは内申点重視の神奈川を発祥の地とし、内申点管理のメソッドを蓄積しながら全国展開してきた。地域ごとの入試事情に加えて、塾が何を重視して指導するかも、塾選びでは重要なポイントになる。
内申点重視の地域と、そうでない地域
内申点の扱いは地域によって大きく異なる。地方では基本的に内申点重視の傾向が強く、内申点管理型の塾が支持されやすい。
これに対して首都圏では、早稲田や慶應の付属校、開成など、一般入試で内申点を加味しない難関私立高校を目指す選択肢もある。こうした学校は入試そのものの難易度が高いため、学力を伸ばす対策が欠かせない。
公立の難関校でも内申点だけで合格できるわけではなく、内申点と学力の両方が求められる。志望校で何が重視されるのかを見たうえで、塾のタイプを選ぶ必要がある。
「学力重視型」か「内申点管理型」か
高校受験の塾は、大きく二つのタイプに分けて考えることができる。一つは、純粋な学力で入試を突破することを目指す「学力重視型」の塾だ。首都圏では早稲田アカデミー、Z会、SAPIX、駿台などが代表例で、主に難関私立校や国立校を目指す層をターゲットにしている。
もう一つが、内申点を高める対策に力を入れる「内申点管理型」の塾だ。ena、臨海セミナー、湘南ゼミナール、栄光ゼミナールなどがこのタイプに該当する。定期テスト対策や提出物の管理、授業態度への助言など、通知表の評価に直結する部分まできめ細かくサポートするのが特徴だ。
この違いを理解しないまま、「合格実績が高いから」「みんなが通っているから」という理由だけで塾を選ぶと、後になってミスマッチに気づくこともある。どちらのタイプが合うかを考えるうえで、まず確認したいのが、地域や志望校による内申点の扱いだ。
学力重視型の塾を選ぶなら、内申点の管理も重要
学力重視型の塾を選ぶ際に大切なのは、学校の成績や提出物を自分で管理できるかどうかだ。特に東京や神奈川のように内申点が入試に大きく関わる地域では、内申点をできるだけ高く保っておきたい。学力重視型の塾に通った結果、学力も内申点も思うように伸びなければ、受験できる学校の選択肢が狭まってしまう。
学力重視型の塾では、内申点の管理や中学校の定期テスト対策を基本的に行わないところも多い。「公立中学の定期テストは高得点を取れて当然」「課題もきちんと提出し、内申点も高いのが前提」という生徒を想定しているためだ。
大人が細かく管理しなくてもコツコツ努力でき、内申点は自分で確保できるので、そのうえでプラスαの学力を伸ばしたい、という層に向いている。
内申点が伸びない場合は、私立高校まで視野を広げる
一方、「学力は高く、定期テストでも高得点を取れるが、課題の提出を忘れて内申点が伸びない」という生徒もいる。こうした場合は、内申点を重視しない私立高校まで視野を広げることで、受験の選択肢を確保しやすくなる。
第一志望を早慶やMARCHの付属校にし、併願で他県の「内申点を加味しない私立高校」を受験する方法も考えられる。神奈川県内では内申点を求める私立が多いため、都内の内申点が合否に影響しない私立高校を併願先として検討することもできる。
ただし、内申点も学力も伸び悩むと、受験の選択肢は一気に狭くなる。内申点を加味しない私立高校の多くは、それだけ高い学力を求めるからだ。
保護者としては、「早慶やMARCHの付属高校に行けるかもしれない」という期待から、そうした高校への合格実績が目立つ学力重視型の塾に通わせたくなるかもしれない。だからこそ、塾の実績だけで決めず、子どもの現在の学習習慣や内申点を見極めたうえで判断したい。
内申点は「武器」にできる
高校受験では、内申点そのものを「武器」にできる。勉強が特別得意でなくても、日々の学校生活の積み重ねが評価に反映されるため、早い段階からコツコツ取り組めば結果につながりやすい。
学力が高い生徒にとっても、内申点が高ければ受験の選択肢は広がる。第一志望を早慶やMARCHの付属校にしながら、都立進学校や県立トップ校を受験することもできる。
反対に、都立や神奈川の県立トップ校を第一志望とし、内申点を使って併願校を先に確保しておけば、一般入試では第一志望校に集中しやすくなる。
内申点対策を自力で進める自信がなければ、内申点管理型の塾に頼るのも有効だ。定期テスト前の対策授業や提出物のチェック体制が整った塾なら、生徒本人や家庭だけでは行き届きにくい部分を補ってくれる。
合格実績は「人数」だけでなく「率」も確認する
塾のタイプをある程度絞れたら、次に見たいのが「合格実績」だ。ここで注意したいのは、合格者数と合格率は別物だという点である。
生徒数の多い塾は、それだけ合格者数も多くなりやすい。一学年に何人の生徒がいて、そのうち何人が合格したのかという「率」まで確認すれば、実績の見え方は変わってくる。
合格者数は多くなくても合格率が高ければ、少数精鋭の塾と考えることもできる。また、高学力層が多く集まる塾に入っただけで、自分自身の難関高校合格の可能性が高まるわけではない。
個別指導塾は校舎ごとの差も見極める
合格実績だけでは実力を判断しにくいのが、個別指導塾だ。高校受験対策で個別指導塾を選ぶ家庭は増えており、生徒本人に合わせて指導内容を調整しやすい点に強みがある。内申点対策まで含めてサポートする塾も少なくない。
「個別指導」でも指導形式はさまざま
ただし、「個別指導」といっても指導の形はさまざまだ。講師1人に対して生徒3人など、マンツーマンではない形式では、生徒が自分で学習を進め、講師が必要に応じてサポートする。一方、マンツーマンや1対2では、講師が一人ひとりをより細かく見やすい。
さらに、講師の技量や授業の進め方にも差が出る。一つひとつ丁寧に教えるあまり、予定していた範囲を終えられないケースもあるため、学習の進捗を校舎長がきちんと管理しているかも確認したい。
大手でも校舎長によって運営の質は変わる
大手の個別指導塾であっても、校舎長によって運営の質に差が出る。
そのため、個別指導を検討するなら、集団塾以上に実際の校舎へ足を運び、校舎長と話して指導内容や管理体制を確かめたい。このとき、校舎単位の口コミも参考になる。
大手のフランチャイズでも、オーナーや校舎運営者の力量によって評判が広がり、生徒が集まるケースがある。
塾選びでは、「有名だから」「難関校に強そうだから」という理由だけで決めないことが大切だ。志望する都道府県の入試制度を確認し、子どもの学習習慣や内申点、目標とする学校に合った塾を見極めたい。

