中学受験をしない小学生にも個別指導塾が広がっている

 今、個別指導塾で生徒が増えているのが「中学受験をしない小学生」だ。

 小学生の学力低下が話題になっているが、原因の一つに宿題の少なさがある。もちろん地域差や学校による差はあるが、特に都内では宿題がほとんど出ないケースも増えている。

 一方、小学校低学年から塾に通う子どもは増えている。ただ、中学受験対策の集団塾は、受験を意識したカリキュラムになっているため、学習の難易度が高く、量も多い。

 「中学受験をするわけではないが、もう少し基礎を重視して勉強させたい」という家庭にとって、個別指導塾が選択肢に入ってくる。

 個別指導塾の場合、塾の講師が1週間分の宿題を出し、「頑張ってやってきてね」と声をかけることで、子どもも宿題に取り組もうとする。つまり、個別指導の講師が1週間の学習を管理してくれるわけだ。

 講師と生徒の距離も近く、講師と保護者も密に連絡をとれる傾向がある。こうした事情から、塾市場でも個別指導のシェアは拡大している。

「個別指導」は1対1と1対3でも大きく違う

 ただし、「個別指導」と一口にいっても中身はかなり違う。大手の個別指導塾はいくつもあるが、それぞれ指導方法や役割が異なる。差別化しなければビジネスとして成り立たないからだ。

 その違いを見誤ると、期待した成果が得られないこともある。そこで、まずは個別指導塾の基本的な違いから説明しよう。

 最初に確認したいのは、講師1人に対する生徒数だ。「完全マンツーマンの1対1(先生1人に対して生徒1人)」「1対2(先生1人に対して生徒2人)」もあれば、「1対3」「1対4」もある。

 前者と後者では、授業の性格が異なる。

1対1は、講師が生徒の課題を細かく分析できる

TOMASのマンツーマン授業の風景 写真提供: TOMAS

 完全マンツーマンでは、講師が生徒の手元を直接見て、計算のクセや記述の抜けまで分析できる。いわば「コンサルタント型」の個別指導だ。

 マンツーマン塾の代表であるTOMASでは、ホワイトボードの前に講師が立ち、個室に近いブースで授業を進める。

 志望校合格を明確なゴールに据え、カリキュラムを年単位で作り直す「進学塾型」の個別指導だ。難関校への合格者数を公表している数少ない個別指導塾でもある。

 難関校対策や、集団塾のフォローとして利用したい家庭に向く。一方、人気講師は予約待ちになることもあるため、早めに相談に行く必要がある。マンツーマンで講師の質を担保するため、費用は高めになる。

1対3は、自分で学ぶ力を育てる「自習伴走型」

 一方、1対3は明光義塾が長年続けてきたスタイルだ。

 生徒は自分で問題を解き、講師は3人の生徒の様子を見ながら順番に指導する。すぐに答えを教えるのではなく、ヒントを出しながら考えさせる「足場かけ」が中心だ。

 授業の最初に「今日やること」を整理し、終わりには振り返りノートで「分かったこと・まだ分からないこと」を言語化させる。講師につきっきりで教えてもらうというより、自習を伴走してもらう要素が強い。

 そのため、自分一人で学習する力を身につけたい生徒に合う。

 反対に、集団塾に通っていて分からない宿題が山のようにあり、講師につきっきりで教えてもらいたい場合などには合わないだろう。

個別指導塾8社、それぞれの特徴は?

 ここからは、各個別指導塾の特徴を簡単に紹介しよう。同じ「個別指導」でも、学習管理を重視する塾、受験対策に強い塾、基礎学力の立て直しを得意とする塾など、その中身は大きく異なる。

栄光ゼミナールの個別指導ビザビ|1対2で日々の学習まで管理

 栄光ゼミナールの個別指導ビザビは、1対2が基本だ。

 80分授業の中で、宿題確認とまとめの時間を確保する。さらに、週間学習予定表を使い、「月曜はこのページ、火曜はこの問題」と日割りで宿題を指定する。

 部活動の予定も織り込むため、授業のない日も学習のリズムが崩れにくい。

 栄光ゼミナール系なので、褒める指導を基本とし、スパルタ式の管理はしない。定期テスト対策と学習管理を同時に求める家庭に使いやすい。受験直前にはマンツーマンに切り替えることもできる。

東京個別指導学院・関西個別指導学院|長期的な学習計画を立てやすい

東京個別指導学院 三ツ境教室 出典:東京個別指導学院公式サイト

 東京個別指導学院・関西個別指導学院も、基本的に1対2が中心だ。

 ベネッセグループで、年数回の四者面談を行いながらカリキュラムを作り直し、50種類を超える市販テキストから生徒に合った教材を選ぶ。

 中学受験から大学受験まで長期間にわたって見てもらえるのが特徴で、ベネッセグループの傘下にあるので情報を豊富に持っているのも強みだ。

スクールIE|性格・学力診断をもとに個別カリキュラムを作成

 スクールIEは、性格・学力診断をもとに完全オリジナルのテキストを作り、AI・ICTを活用した個別指導を強みとしている。

ナビ個別指導学院|「褒める指導」と内申対策を重視

 ナビ個別指導学院は、徹底した面倒見のよさと、褒めながら内申点アップを目指すフォローが厚い。

東進個別|定期テスト対策から評定平均値アップを目指す

 東進個別は、映像授業を活用した個別指導だ。

 高校の教科書に準拠した内容で定期テスト対策を行い、評定平均値アップを目指す。推薦・総合型選抜を意識した学習管理が特徴だ。

 同じナガセグループには、推薦・総合型選抜対策を専門とする早稲田塾もあり、そうした入試についての情報やノウハウも持っている。

四谷学院|基礎から徹底的にやり直す

 四谷学院の個別指導は、徹底して基礎からやり直すのが特徴だ。

 基礎から勉強し直すのは一人ではなかなか難しいため、講師が指導しながら、抜けている部分を一つずつ固めていく。

 このメソッドのためか、中高一貫校で成績が伸び悩む生徒が四谷学院に通う姿をしばしば見かける。

 難関の中学受験を乗り越えているのだから、勉強に向いていないわけではない。成績が伸び悩んでいる理由が基礎の抜けにあるのであれば、そこを固めることで成績が上がっていく可能性がある。

 実際、四谷学院を取材した際にも、中学受験の「御三家」と呼ばれる難関校の制服を着た生徒たちの姿が目に入った。

 このように、同じ大手の「個別指導」でも、コンサル型、自習伴走型、推薦・総合型選抜対策型、一般選抜対策型などに分かれる。「個別指導ならどこでも同じ」と考えず、子どもの課題に合ったタイプを選ぶことが重要だ。

個別指導塾は「ブランド」だけでなく「校舎」も比較する

 最後に、個別指導塾の選び方についても解説しよう。

 まずは、いくつかの塾を実際に回ってみるのがいい。その中で、ある大手個別指導塾の内容が「うちの子には合う」と思い、そのブランドに決めたとしても、そこで終わりではない。

 同じ塾の校舎を複数見てほしい。

 直営校とフランチャイズ校が混在するチェーンは特に、教室長の力量、講師の定着率、自習室の使い勝手、質問のしやすさなどに差が出る。

 同じ看板でも、地域の学校の定期テスト範囲を壁に貼り出して細かくフォローする校舎もあれば、そうでない校舎もある。授業後の連絡ノートが必須になっているはずなのに、それをしていない校舎もある。

 複数の校舎を比較してみれば分かるが、生徒が集まって盛況な校舎には、それなりの理由がある。校舎長が塾業界で長く経験を積み、受験にも精通しており、校舎全体の指導力が高い。そうした評判が口コミで広がり、生徒が集まってくるのである。

地元で長く続く個人塾も候補に入れたい

 今回は大手の個別指導塾を中心に話をしたが、地元で長く経営している個人塾があれば、そこにも必ず足を運んでほしい。

 大手塾が市場を席巻する中で、それでも長く生き残っている個人塾には、それだけの理由があるからだ。

 たとえば、地元の中学校・高校の授業内容に精通し、それぞれの学校に合わせた補習を行うことで、成績を上げてくれる塾もある。

 結局、塾は「人」である。校舎長の能力によって、指導の質は変わる。

 ブランド名だけで決めるのではなく、実際に教室へ足を運び、校舎長や講師、教室の雰囲気まで比較する。その手間をかけて塾を選ぶことで、経済的にも時間的にも効率のいい塾通いができるのだ。