新興国の勃興を描いた『東西逆転』の著者で、アメリカ経済戦略研究所所長のクライド・プレストウィッツ氏は、世界新通貨体制の必要性を早くから提唱していた人物だ。その同氏の眼に映るドルの未来とは?

クライド・プレストウィッツ
クライド・プレストウィッツ アメリカ経済戦略研究所所長

―ドル基軸通貨体制の寿命は何年か。

 その議論の前に、まず現状をきちんと認識する必要がある。円高に直撃されている日本から見れば、極度のドル安と映るだろうが、じつはドルは他の通貨に対してはさほど弱くなっていない。それどころか、ユーロ、ポンド、カナダドル、スイスフランに対しては、この半年間で数十パーセント上がっている。

 その理由は今、世界経済がパニック状態にあるからにほかならない。こうした状況下では、米国債が最も安全な投資先とされ、その結果ドルが強くなっているのだ。

 ただ、私は、このドルの強さはおそらく今後2~4年しか持たないと思う。それ以降は米国でインフレが起こり、ドルは弱体化する。そこからG20やIMF(国際通貨基金)が新しい世界通貨体制を打ち立てようと動き始めるだろう。もちろんその新しい通貨体制のなかでもドルが果たす役割は重要だが、これまでとは比べものにならないほど小さくなる。

―現在議論されている「ブレトンウッズ2」を指しているのか。

 そうだ。だが、新通貨体制が必要だというだけで、ブレトンウッズ2の中身はまだ誰にもわかっていない。

―どんなかたちがありうるのか。

 固定相場、あるいはある種の管理相場制に戻ることもあるだろう。またIMFのSDR(特別引出権)のような通貨バスケットという道もある。さらにバスケットのなかに原油や商品を含めるという考え方もできる。