つまみ食いをする子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

真の成功者とは、目先の快楽に惑わされず、遠いゴールに向けて努力し続けることができる人である。「自分には才能がないから…」「もう歳だから…」と諦める必要はない。「自制心」は大人になっても鍛えられるし、「やり抜く力」は、心の持ちようでいかようにも改善するからだ。※本稿は、シリーズ36万部を突破した中室牧子氏のベストセラー『「学力」の経済学』(ディスカヴァー携書)の一部を抜粋・編集したものです。

我慢のできなかった4歳児は
勉強できない高校生になった

 人生を成功に導くうえで重要だと考えられている非認知能力のひとつは「自制心」です。

「マシュマロ実験」と呼ばれる有名な研究があります。コロンビア大学の心理学者であるミシェル教授は、当時勤務していたスタンフォード大学内の保育園で、186人の4歳児の自制心を次のような方法で計測しました。

 まず、子どもにマシュマロを差し出します。次に、「いつ食べてもいいけれども、大人が部屋に戻ってくるまで我慢できればマシュマロを2つ食べられますよ」とだけ伝えて、大人は部屋を退出します(この時点で大人がいつ部屋に戻ってくるかは、子どもにはわかりません)。

 そして、部屋を出て15分後、大人が戻ってきます。この結果、186人のうち約3分の1は15分間我慢して2つのマシュマロを手に入れることができましたが、残りの3分の2は我慢できずにマシュマロを食べてしまっていました。

 その後ミシェル教授は、彼らの人生を追跡して調査を行いました。その結果、彼らが高校生になったときにはかなりの差が生じていることが判明します。大人が戻ってくるまで我慢して2つのマシュマロを手に入れた子どもは、我慢できずに食べてしまった子どもよりも、SAT*のスコアがずっと高かったのです。

*Scholastic Aptitude Testの略で、アメリカの高校生を対象とした大学進学適性試験のこと