「NONSTYLE」の石田明さんPhoto:Diamond

12月22日に放送される、漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2024』の審査員が発表された。松本人志氏不在の今年、審査員、そして審査員長を誰が務めるのかに注目が集まっている中で、審査員9人の最初に名前が挙がっていたのが「NONSTYLE」の石田明さんだ。先日発売された著書『答え合わせ』(マガジンハウス新書)には、M-1 2008年チャンピオンであり、“生粋の漫才オタク”を自称する石田さんの漫才論や芸人論、そしてM-1論が熱く展開されている。今年44歳の石田さんが芸人として戦い、揉まれてきた「時代」は、社会人として葛藤してきた私たちのそれと同じ世界線にあった。そんな石田さんに、同時代の戦友として生き様の話を聞きたい。第1回のテーマは「組織、そして自分の成長とは?」だ。(聞き手/コラムニスト 河崎 環)

自分は会社に合っていない、時間が無駄だと思ったら
さっさと転職すべき?

【Q:大転職時代と言われる今、若手も中堅も転職を意識している人が多い環境で働いています。所属している会社との相性が良くない気がする、思い通りに認められずチャンスを与えられない、自分の時間を無駄にしている気がする、といった時、さっさと辞めて次に行くのがいいのでしょうか?】
(※質問内容は、編集部で作成した架空のモデルケースです)

――石田さんは大阪NSCから今までずっと業界最大手の吉本興業にいらっしゃいますが、芸人さんにとって、所属事務所との相性はとても大事ですよね。

石田:僕はお笑いの話をよくお酒で例えるんですが、仮に吉本興業が辛口の日本酒しか製造しませんと言っていたとすると、辛口が育つわけですよ。甘口や旨口のお酒を作って売り出したいと言っても「うちは辛口しかやらないから」と言われるのは当然なんです。会社の方針が決まってるので。

 でも本当に旨いものを作れば、もう独占状態。周りは辛口でも旨口は自分たちだけとなれば、目立つわけですね。辛口をやっている芸人は多いから、辛口需要が分散して芸人それぞれへの需要はちょっとずつ減るんですが、旨口への需要は自分たち1箇所に集まるんです。

 僕たちのこのスタイルは、お笑いの流れが一時、笑い飯さんとか千鳥さんとか、ああいう流れになったとき、ずっとここを粘った結果なんですよね。

――ポップさに背を向けるような、野武士のような芸人さんたちがお笑いの腕を磨いて競う……特に2000年代初めごろは、そんな時代でしたね。

石田:でも元々は、こっち側が多かったんですよ。吉本は陣内さんがいて、シャンプーハットさんがいて、どちらかといえばポップでメディアにもどんどん出るような……ロザン、キングコング、ランディーズとか。そういう人たちが売れてる時代もあったわけですよ。バッファロー吾郎さんとか野生爆弾さんとか、技術にこだわる辛口の方が少数派だったんです。