昨年来の株式相場の急落が一向に収まらず、景況感が厳しく冷え込む中で、18日、春の通常国会が召集され、年末にまとまった政府原案を軸にした予算審議が始まることになった。ここで問題なのは、政府・与党が、この政府原案で、巨額の“埋蔵金”、つまり特別会計に秘匿されている剰余金の存在を有耶無耶にしたまま、一段と景気の足を引っ張る予算を押し通そうとしていることである。いったい、どこまで“官製不況”を増幅するつもりなのか。福田康夫内閣に速やかな再考を求めたい。

 まず、霞が関の官僚たちが全容を明かそうとせず、福田首相が行政の長としての使命を果さずに、その“隠蔽”を黙認している埋蔵金の実体を推測してみたい。前回のこのコラムでも触れたデータだが、手掛かりとなるのは、2005年4月の経済財政諮問会議(当時の議長は小泉純一郎元首相)に提出された「各特別会計の改革案」である。この改革案には、主要な31の特別会計の資産・負債状況がどうなるか、2005年度、2009年度、2014年度の3時点について「現状維持ケース」と「改革ケース」に分けて6つの試算が明記されている。

特別会計の事業終了時には
埋蔵金68兆円が見込まれる

 この中で、すでに完了した2005年度(現状維持ケース)について、資産から負債を引いた差額(剰余金)に着目。これを官僚たちが過去に溜め込んできた埋蔵金と考えると、その金額が最も大きいのは、財務省所管の「財政融資資金特別会計」で、その剰余金額は実に26兆7291億円に達している。次いで、同じく財務省所管の「外国為替資金特別会計」に6兆2804億円、農林水産省の「国有林野事業特別会計」に5兆7120億円、厚生労働省所管の「労働保険特別会計」に2兆5634億円、国土交通省所管の「空港整備特別会計」に2兆1400億円の剰余金が存在するという。これら5つの特別会計の合計だけですでに43兆4249億円の埋蔵金が溜まっている計算だ。

 そして、それぞれの特別会計で終了時点は異なるが、将来、事業を終了する際に、それぞれの特別会計が巨額の資産・負債差額を生むと見込まれている。この5つの特別会計でみると、その差額は、「財政融資資金特別会計」が2037年度に53兆4045億円、「外国為替資金特別会計」が2005年度に4兆2803億円、「国有林野事業特別会計」が2006年度に4兆4961億円、「労働保険特別会計」が2014年度に4兆1523億円、「空港整備特別会計」が2012年度に2兆3077億円といった具合である。これらを単純合計すると、実に68兆6409億円の埋蔵金が発生すると見込まれている計算だ。