世界では、貧困、差別、気候変動などに端を発する様々な紛争が多発している。それを解決するために必要なのは、力ではなく「対話」である。南アフリカ共和国のアパルトヘイト問題、パレスチナ紛争、グアテマラ内紛、コロンビア内戦など、様々な紛争の解決に取り組んできたアダム・カヘン氏は、「対話」を重視する世界的に有名な紛争解決ファシリテーター(紛争解決人)だ。4月中旬にSoLジャパン(組織学習協会日本コミュニティ)主催のシンポジウムに招かれて来日したカヘン氏に、国際社会で求められる問題解決の手法を詳しく聞いた。カヘン氏は、問題が山積する企業社会に対しても、「対話による問題解決」の重要性を強調する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

世界的な“紛争解決人”が説く問題解決の真髄<br />「力ではなく“対話”こそが国や企業を甦らせる」 アダム・カヘン(Adam Kahane)/カナダ生まれ。レオス・パートナーズ社パートナー、オックスフォード大学経営大学院「科学・イノベーション・社会研究所」特別研究員。ロイヤル・ダッチ・シェル社で社会・政治・経済・技術に関するシナリオチームの代表を務める。南アフリカの民族和解を推進するプロジェクトに参加後、独立。企業や政府などの問題解決プロセスのオーガナイザー兼ファシリテーターとして、これまで50ヵ国以上で活躍。

――カヘン氏は、日本では馴染みの薄い「紛争解決ファシリテーター」(紛争解決人)という仕事に従事されている。何故この仕事に就いたのか?

 1080~90年代にかけ、ロイヤル・ダッチ・シェル社の戦略企画部門において、主に環境問題の解決などを担当していた。転機となったのは、アパルトヘイト廃止に伴い、白人と黒人の紛争が激化していた南アフリカ共和国に対して、民族和解を促すためのプロジェクトに、シェル社の責任者として参加したことだ。

 そのときの経験を生かしてコンサルタントとして独立し、以後ワークショップを通じて、国際社会の紛争解決に携わるようになった。パレスチナ紛争、北アイルランドの独立紛争、アルゼンチンの経済危機、グアテマラの内紛、コロンビア内戦など、これまで様々な問題解決に取り組んできた。

――世界的に広く認知されているそれらの紛争を解決するのは、並大抵のことではない。カヘン氏の問題解決手法とは、どんなものか?

 我々の仕事は、力をもって力を制することではない。紛争の利害関係者が一同に集まり、対話を通じて「どこに真の問題があるのか」を話し合い、お互いの考え方に理解を深めることを促す問題解決手法をとっている。