日本の自動車産業に破壊的な影響を与える可能性があるBYDが販売するPHEV「シールU」日本の自動車産業に破壊的な影響を与える可能性があるBYDが製造・販売するPHEV「シールU」 Photo:JIJI

売上高でテスラを超えた中国の自動車メーカーBYDが、日本の自動車業界に与える影響は甚大です。すでに日産の売上高を追い抜き、ホンダ超えも視野に入った同社。トヨタの存在すら揺るがしかねない新勢力は「しょせん中国車だから大丈夫」と軽視できる相手ではありません。EVやPHVの覇権だけでなく、次世代モビリティの基盤となるSDV、自動運転、そして充電インフラまで…世界の先端を走るBYDの圧倒的な技術力に日本メーカーは太刀打ちできるのでしょうか。実現すれば、日本の自動車産業が吹っ飛びかねない「最悪のシナリオ」とは――。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

トヨタが15万台、BYDは248万台…
脱炭素の本命・PHEVで歴然たる差

 中国の自動車大手のBYDが3月24日に2024年12月期の決算を発表しました。売上高が前年比26%増の7770億元(約16兆700億円)で、ライバルであるアメリカのテスラの977億ドル(約14兆7000億円)を上回りました。純利益は前年比34%増の402億元(約8300億円)とこちらも好調ですが、テスラの71億ドル(約1兆600億円)にはまだ届いていません。

 このニュース、日本経済に与える影響がとてつもなく大きいのにもかかわらず、あまり大きく報道されていないことが気になります。この3月期の日産自動車の売上予想12兆5000億円をBYDはすでに上回り、来年にはホンダ(今期売上予想21兆6000億円)超えも視野に入ってくる台頭ぶりなのにもかかわらず、財界はそれをあまり気にしていないように感じるのです。

 この現象、1980年頃のアメリカ経済の日本車に対する塩対応に似ている気がします。「どうせ中国車だからたいした影響はない」と考えているとしたら、判断を誤るかもしれません。

 この記事ではBYDがどのような存在なのか。そしてその成長が日本経済にどのような影響を与えるのか。日本のメディアがあまり報道したがらない不都合な真実をまとめてみたいと思います。