大胆なリストラで体力を回復する一方、日米オープンスカイや緻密な販売戦略構築で国際線拡大戦略に打って出る全日空(ANA)。「アジアナンバーワン」の野望に勝算はあるのか。伊東信一郎社長に聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

全日本空輸(ANA)伊東信一郎社長<br />「もうJALは見ていない。必ず黒字化して上を目指す」全日空(ANA)の伊東信一郎社長
Photo by Kiyoshi Takimoto

 3月に発表した、今後2年間の成長戦略のポイントは大きく二つ。今期の黒字化と、国際線拡大を軸とした成長戦略だ。

 この数年の不況で、収入はピーク時から2700億円も減った。想像を絶する環境下でなんとか持ちこたえられたのは、2003年からホテルや不動産事業を売却するなど、事業の選択と集中を行ってきたことや、昨年行った公募増資などのおかげだ。

 今期も引き続き、コスト削減に力を入れ、どのような事業環境にも耐えうる体質を整えていく。間接人員を1000人削減したり、労働時間延長を現場にお願いするなど、人件費もギリギリまで削り込む。生産性を上げなければ、競争に勝てない。

 一方で、今年は羽田国際化や成田の発着枠拡大などが行われる節目の年。当社もいよいよ、国際線で打って出る。

 ただし、国際線の赤字がJAL(日本航空)を直撃したことからもわかるように、国際線はボラティリティ(変動リスク)が高い商売だ。単なる拡大志向では利益が出ない。