![儲かる農業2025 日本の夜明け#7](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/8/9/650/img_899febee5853deb22789d357db3e1927496904.jpg)
農林中央金庫の奥和登理事長が辞任する方針を固めたことが18日、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。2025年3月期決算で1.5兆円超の最終赤字に陥ることの責任を取る。農林中金は、同決算期に巨額赤字に沈む見込みを発表した24年5月の決算会見当日、奥理事長の続投を決めていた。JAグループ内からは「引責辞任のタイミングは遅きに失した」との声が上がる。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#7では、農林中金の次期理事長の実名と、トップ交代の裏事情、残された経営課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
JA関係者8割が農中役員の「報酬カット」に不満
6割が奥理事長の辞任を求めていた
農林中央金庫は2024年4~12月期決算で、1兆4145億円の最終赤字に沈んだ。大手銀行3行が同決算期で過去最高益となる約1兆円の純利益をたたき出している中で「独り負け」の状況だ。
08年のリーマンショック時に農林中金の理事長だった上野博史氏は、巨額赤字を計上して1兆9000億円の増資をせざるを得なくなった責任を取って辞任した。この上野氏の例を踏まえ、農林中金に出資する農協からは「奥和登氏が理事長に居座るのはおかしい」(農協役員)といった声が上がっていた。
ところが、奥氏は理事長の地位にとどまってきた。
農林中金は25年3月期通期決算で「5000億円超」の純損失に陥る見込みだと発表した5月22日の決算会見の前日、役員推薦会議(企業の指名委員会に相当)を開いて奥氏の3期目(1期3年)の続投の方針を決め、その翌日の会見当日の経営管理委員会(企業の取締役会)で正式決定していた。
こうした経緯を踏まえ、ダイヤモンド編集部は農協役職員にアンケートを実施し、農林中金の経営責任について聞いた。すると、農協役職員の8割が「現状の役員の責任の取り方(理事長の報酬3割カット、役員は全員続投)では不十分」と答えた(詳細は本特集の#6『農林中金理事長が1.4兆円赤字でも「トップ居座り」に農協役職員がNO!JA関係者8割が甘い報酬カットに不満【農協役職員アンケート248人の本音】』参照)。
次ページでは、次期理事長の実名と、トップ交代の裏事情、残された経営課題を明らかにする。