「ホンダと日産が統合なんて絶対ムリだった」元日産幹部が語る破談の内情と、古巣を待ち受ける悲惨な末路ホンダとの経営統合に向けた協議を打ち切ると発表した、日産自動車の内田社長。背景には根深い事情があった Photo:JIJI

あっけなく破談したホンダと日産
元「中の人」が見抜いていた内情

「この統合は絶対失敗する」

 昨年12月下旬、ホンダと日産自動車の経営統合が報じられた直後、私は日産自動車の元社員で、経理部門の幹部だった友人から、こんなメールをもらいました。そしてここにきて、彼の「予言」は的中することになったのです。

 先日、両社は経営統合に向けた協議を打ち切り、基本合意書を撤回すると発表しました。報道では、突如ホンダが日産の株式を取得して子会社化する案を打診したことに対し、対等な統合を希望していた日産が猛反発したとのことです。実現すれば、販売台数で世界第3位の自動車グループとなり、自動車業界の大型再編劇の口火を切るはずだったホンダと日産の統合交渉は、なぜあっけなく決裂してしまったのでしょうか。

 メディアはこぞって今回の破談劇を分析していますが、私は「日産の中の人」だった友人が語っていた内情が、最もよくその原因を言い表していると感じました。今回はホンダと日産の統合交渉が破談した原因と、今後の日産の行方について、元日産社員の友人の意見を踏まえながら、考察してみようと思います。

 まず、友人が指摘していた4つのポイントを紹介します。

(1)ホンダと日産の経営統合は絶対にうまくいかない。

(2)カルロス・ゴーン元社長の経営手腕への評価は高くない。

(3)日産社員は、「現経営陣には会社の再建は無理だ」と考えている。

(4)日産を再建するには事業分割しかない。

 これらのポイントの中身を具体的に見ていきましょう。友人の意見をできるだけ正確に紹介しながら、自身の考えも踏まえ、読みやすいように調整しています。彼はこれから訪れるかもしれない日産の「悲惨な末路」についても危惧しています。

●ホンダと日産の経営統合は絶対にうまくいかない

 友人は、「おそらく早い段階でホンダが手を引くだろう」と予言していました。その理由は、日産自動車の内部には明確なヒエラルキーが存在し、それが統合の障壁になる可能性が高いからだというのです。

 技術系の人材が尊重される日産では、開発部門が最上位に位置し、工場を運営する製造技術がそれに続き、事務系の営業や経理・財務部門はその下と見られています。そして、会社の中枢にいるかのように錯覚される経営企画や社長直轄のプロジェクトチームは、実は社内ヒエラルキーでは最下位だといいます。これは、ルノー・ゴーン体制になる以前から変わっていません。