強引に建設が進められてきた静岡空港が、来年3月の開港予定を目前にして崖っ縁に追い込まれている。杜撰な計画と事業執行のツケが最終局面になって噴出し、静岡県は今、絶体絶命のピンチに立たされている。

 空港開港には国による完成検査やテスト飛行などのチェックが義務づけられている。安全性を確保するためだ。完成検査だけでも2ヵ月はかかるため、静岡県は8月中に国への申請を予定していた。

 ところが、致命的な問題が浮上し、完成検査の申請をいまだに行なえずにいる。空港周辺部に、本来ならば除去すべき立ち木や土石が残されているからだ。

 立ち木については、制限されるべき高さを10メートルあまりも上回るものが数十本も存在しており、飛行機の離着陸を妨げかねない。県の杜撰な測量によるミスだ(『週刊ダイヤモンド』2008年6月28日号で詳述)。

 にもかかわらず静岡県は、こうした「障害物件」の存在を公式には認めず、「ノーコメント」(県空港部)を繰り返す。完成検査をいつ国に申請するかについても口を閉ざし、「障害物件」の所有者との話し合いについても「ノーコメント」の一点張り。

 また、地元メディアの報道も、来年3月開港を前提に就航路線や利活用の話題ばかりを伝えている。

 つまり、空港の大問題について県民はまったく知らされずにいるのである。

 だが、静岡県が絶体絶命のピンチに立たされているのは、間違いない。刻々と迫る開港日を前に事態打開の策が見出せず、焦りに焦っている。それが知事の行動に表れた。

 8月30日の夕方、石川嘉延知事が「障害物件」の所有者宅をアポなしで訪問した。町内会役員の案内で突然、知事が姿を現したのだが、あいにく本人は不在。電撃訪問はムダ足に終わったが、その行動は問題の大きさを示すものだ。

 知事に今必要なのは、ありのままの事実を県民に知らせ、県の不手際をきちんと謝罪することであろう。

(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 相川俊英)