
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第57回(2025年6月17日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
『アンパンマン』誕生のきっかけ
空腹エピソードがついにスタート!
『アンパンマン』誕生のきっかけとなる空腹エピソードのはじまりである。
戦場での食糧難という内容が内容だけに、待ってました!という晴れやかな気分にはならないのだが、それでも『アンパンマン』誕生に近づいていることに気持ちが沸き立つのは抑えきれない。
宣撫班に配属された嵩(北村匠海)は紙芝居を作ることになった。
宣撫班の仕事は「医療活動や娯楽で、日本軍に親しみを深めさせ、占領に協力させることを目的」とした活動だ。当初、宣撫班は、『桃太郎』を紙芝居にして見せていたが、英雄・桃太郎を日本人に見立てた物語は中国人たちには不評で、それに代わる新作を嵩が任されたのだ。
嵩は、父・清(二宮和也)の手帳に記された「東亜の存立と日支友好は双生の関係である」という言葉をヒントにして『双子の島』というオリジナルを考案する。その内容とは。
ひとりの男が島に漂着。そこに暮らす男と出会い、食べ物をめぐって争いをはじめる。すると、なぜか相手を殴ると自分も痛みを感じるため争いを中断。実はふたりは双子で、離れ離れに育ったことがわかる。けんかをやめて共に助け合っていこうと、お互いの島に足りないものを分け合うことにする。というものだ。