画像の説明パート、アルバイト、派遣、個人請負……。今、非正規社員は1700万人を超え、雇用者全体の3分の1を占めるまでになりました。ひとつの会社に縛られない非正規社員が増えたことを、「働き方が多様化した」といえば聞こえがいいのですが、さまざまな問題を孕んでいます。そのひとつが、正社員と非正規社員の賃金格差です。

 実際、男性が一生を正社員として過ごした場合、生涯で得る賃金の総額は平均で2億3200万円。一方、フリーターなど非正規社員だと生涯賃金は、男性で6200万円程度(労働時間週25時間)、女性だったら5200万円程度になってしまいます。その差は2億円近くになります(みずほ総合研究所の試算)。

 さらに、働き方によって老後の年金も違ってきます。正社員の男性は月17万円もらえますが、非正規社員だと6.6万円。しかもそれは保険料を支払っていた場合のこと。支払っていないならゼロです。正社員なら給料から天引きされているので、そのリスクはほとんどありません。

 今後、日本は少子高齢化で労働力人口は減っていきます。若年層、高齢層、女性といった「全員参加型」の労働市場の形成は避けて通れません。だからこそ「働き方の多様化」が叫ばれているわけです。

 ところが現状では、「高処遇だが拘束度の高い正社員」と「低処遇だが自由度の高い非正規社員」しか、事実上選択肢がありません。しかも選択肢といっても、就職超氷河期を過ごした現在30歳前後の世代など、自ら望んで非正規社員という働き方を選んだ人ばかりでもありません。

 企業にとって非正規社員は、景気や受注状況に合わせて労働力を調節できる便利な“調整弁”にもなっています。だから、派遣社員やアルバイトの中には、正社員と同じ仕事をしている人もいます。にもかかわらず、これだけの賃金差が生じているというのは納得いかない話です。