松橋 それは非常にいい着眼点だと思います。じつは、当社もアプリの画面(ユーザー・インターフェイス)のデザインにはものすごく力を入れているんです。今のユーザーは機能だけではなく“顔つき”(相性、使いやすさ)でアプリを選んでいますから。機能以外でどこをお客様に評価していただくかというと、こうした"顔つき"が非常に重要になってくると思います。

入山 LINEが人気があるのも、顔つきがいい、つまり親密感があるからなんでしょうね。

コンシューマ向け「LINE」との
連携も視野に

ネット時代になってなおさら、インフォーマルなコミュニケーションの活性化が重要になっているという入山准教授の指摘に、松橋社長も同意

入山 僕がよく言っているのは、これからもっとインフォーマルコミュニケーション(非公式・偶発的なコミュニケーション)が重要になるということです。というのも、本当に重要な情報は絶対にネットに出ないから。だから、主要なIT企業はシリコンバレーの、あの狭いエリアにあれだけ集まっているわけです。IT企業なのに、ものすごく矛盾していますよね。言い換えれば、それほどインフォーマルコミュニケーションを活性化させることが重要なんですが、ビジネスSNSはそれを代替するツールになる可能性があると思いました。コンシューマ向けのLINEと連携させれば、さらに面白いのではないでしょうか。

松橋 おっしゃるとおりです。お客様からもご要望をいただいていて今、LINE社とも連携をさらに進めているところです。例えば、住宅やクルマなど、密な商談コミュニケーションが求められる場合、お客様の方からLINEで連絡を取りあいたいと言われるケースが増えているそうなんですね。ただ、企業側からしてみると、コンシューマ向けのLINEを仕事で使うにはセキュリティの問題があります。ですが、ビジネスSNSのLINE WORKSとLINEを連携させれば、企業にとってはコンプライアンスを満たす一方、お客様も企業のツールなので安心して情報交換でき、両者にとってメリットがあります。

入山 なるほど。そうなれば、人脈という点でも広がりが出てきそうですね。

松橋 すでにLINEを使いこなしていらっしゃる方も多いでしょうし、大きなエコシステムを作ることができる可能性があると思います。また、決裁機能をはじめ、人間に代わって自動的に何かをしてくれるプログラム「ボット」の組み込みなどもできるようになりますね。ボットを使えば、お客様情報のアップデートもPCを使う必要はなく、ボットでできてしまいます。「今日、この会社を訪問しましたが、どうでしたか?」「セールスの確度は上がりましたか?」といったやりとりで自動的にアップデートすることも可能になります。

入山 チャットの良さを引き出せそうですね。決裁機能が加われば、部長はどこにいてもいいわけですから、積極的に外に出てフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを深めることが可能になる。ですから、ビジネスSNSは、コミュニケーションを代替する一方、リアルなコミュニケーションを加速させるツールでもあるんですね。