スクウェア・エニックスで「総務部長」で実践した経営改革
岡田 その後スクウェア・エニックス本社に呼び戻されました。帰任して社長から伝えられた役目は「総務部長」でした。
私は総務部長の経験はなかったのですが、社長から「米国でやってきたようなこと、つまり組織を元気にすることへの貢献を期待したい」と。当時、スクウェアとエニックスが合併して数年経った後だったのですが、カルチャーの違いもまだ残っており、風通しは決して良いものではない状況でした。組織風土を変えて社員一人ひとりが元気に活力のあるクリエイティブ集団を作ること、これが「総務部長」としてのミッションと期待されたと理解し、私の戦いが始まりました。
――米国ではCOOの立場で行なった、働く場づくりや組織づくりによる社内改革ということを日本の本社でやるには、総務部長というポジションが一番適切だったわけですね。
岡田 そうですね。トップマネジメントが事業戦略を考え、事業をきちんと推進するのは当たり前のことですが、そもそも事業を作っていくのは「人」ですよね。ですから組織のベースとなる人の意欲や元気の度合いを高めることは非常に重要になる。総務というのは、現場の人の温度感や組織の体温をもっとも体感できる部署です。

一般的に社内の改革というと、経営企画部や社長室、あるいは人事部などが主導するケースもあると思いますが、会社を抜本的に変えるためには、経営が考えていることと現場の本音のギャップをいかに埋められるかがカギになると思います。経営企画や社長室は経営、人事部も経営に近い立ち位置ですから、なかなか現場の本音を吸い上げるのは難しい。
――確かに、現場の体温を体感している総務が社内改革の中心になったほうが、役員会議室で話し合われることだけではなく、現場の問題や、社員の気持ちを反映した改革がよりしやすくなるイメージがあります。
岡田 現場社員にとって人事部と話すときはちょっと身構えてしまうところがあるかもしれませんよね。でも、総務部というと、みなさん、身構えずに本音を言いやすい印象があるのでしょうね。現場の本音を集めやすいのは総務の方なのでは、と思います。
――米国でCOOであった岡田さんが経営的な視点をもちつつ、現場の本音を感じとれる総務部長というポジションで社内改革を行なったことで、経営と現場のギャップを埋めながら社内改革を進めることができた。これはとても理想的な形ですね。具体的にはどのようなことをしたのですか。
岡田 社内の雰囲気を劇的に変える手法の一つある「本社オフィスの全面移転」を断行し、風土改革にチャレンジしました。
米国での経験をベースに、社員たちがお互いにコミュニケーションをとりやすく、組織が活性化するようなオフィス作りを提案し、ICTの整備による生産性が上がる効率的な環境づくりはもちろん、普段、社員たちが仕事をするワークスペースから、ミーティングスペース、社食にいたるまで、とにかく「人の気持ちを大切に、わくわくしながら働ける環境」、私はこれを「場」と呼んでいますが、クリエイティブに資する「場」つくりを目指して、オフィス改革を進めました。
――成果は出ましたか?
岡田 そうですね。社内が明るくなり、社員たちもコミュニケーションがとりやすくなって、風通しがよくなったという実感があります。オフィスの機能性も外部の方々から評価していただき、JFMA賞をいただきました。その後、多くのファシリティマネジメントに携わる方々から見学の依頼を受けることも多くなっています。
でも、何よりも成果を感じるのは、会社の数字として表れたことです。



