スクウェア・エニックスの総務部長、岡田大士郎さんは、同社の米国現地法人でCOOとして社内の働き方、オフィス改革を実践し、その後、日本本社では総務部長のポジションでオフィス改革を通じた経営改革を実行。経営者としての経験をもちながら総務部長として企業の改革を手掛けた経験を持つ稀な存在だ。その岡田さんに「経営と総務」について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン事業部部長 田村淳一)

――はじめに、岡田さんが手掛けられた社内改革について教えてください。

岡田 私はもともと日本興行銀行やドイツ証券などの金融機関にいたのですが、2005年にスクウェア・エニックスに内部監査室長として入りました。興銀時代にロンドンに5年勤務していた経験や、外資系企業にいた経験などから、入社後、間もなく米国現地法人であるSQUARE ENIX, INC.にCOOとして赴任することとなりました。

日本企業に「経営総務がない」理由<br />おかだ・だいしろう/スクウェア・エニックス総務部長。1979年4月日本興業銀行(現みずほ)入社。広島支店、興銀リースに4年間出向後、本店営業部、ロンドン支店勤務を歴て、本店経理部税務室を最後に、1999年7月ドイツ証券(国際税務統括)に転職。2005年1月よりスクウェア・エニックス。05年7月~07年8月スクエニ米国法人COO、07年9月より本社総務部門で総務部長としてワークプレイス変革、インナーブランディン等、経営基盤の維持構築に従事中。ファシリティオフィスサービスコンソーシアム(FOSC)副代表理事、東京支部長。

 米国法人は日本にある本社の10分の1くらいの規模でしたが、赴任してみると社員の元気が感じられず、それによっていろいろなことが停滞していたり活力を生み出せない状況に陥っていると感じました。一部の社員の人心が離れかけていたり、まとまりのない状況となっている組織をどうにかしなければならない。求心力となるものは何か、エンゲージメントをどう高めていけばいいか、など心が離れかけている社員たちを引きもどして、エンターテインメントを作り出す集団となるような体制づくりが必要でした。

 まずは、全社員とのone on oneでの対面インタビューを実施し、彼らが何を想い、どのような働き方を望んでいるかを知るところから「場」の改革を着手しました。そして、オフィス環境を整えて、働く意欲が高まるワークプレイス改革につなげていきました。

――企業風土を変えたり、生産性を上げるというとき、海外の企業では、社員の働く場や働く環境を整えて最大限パフォーマンスを発揮してもらうということを経営者が重視している印象があります。だからオフィス作りがいわゆる“経営課題”を解決する一つの手段として当たり前になっているような……。ファシリティマネジャーという存在が当たり前になっていることも関係しているかもしれません。

岡田 そうですね。当時の私は、仕事上、ディズニーやアップル、そしてスターウオーズを制作しているルーカスアーツといったスタジオなどにもお邪魔する機会が多かったのですが、そういうクリエイティブ企業のオフィスは、社員たちの働く環境を第一に考えた、創意工夫に溢れた素晴らしい「場」としてのオフィスが多かったです。経営者としてそれにはとても刺激を受けました。

 当時は、うらやましい限りでしたが、自社内でもできる限りの「場」の改革を進めた結果、社員同士のコミュニケーションがよくなり、環境が快適になったことで社内の空気が少しずつ変わってきたことを実感しました。

――やっぱりオフィスの効果は大きいですか。

岡田 ええ、それはもう。COOとして、そうした変化を目の当たりにしましたよ。