岡田 2012年のオフィス移転の前と後では業績が明らかに好転し、移転前と今3月期を比較すると営業利益ベースでは2.5倍から3倍、純利益では約10倍、株価は約5倍になりました。
働く人を活性化することで生産性が上がる。もちろんオフィス環境を変えたことだけが理由ではありませんが、ここまで業績に現れたという事実は、多くの経営者に知ってもらいたいところです。
経営はどんな風に総務を見ているか
――全社を巻き込んだこういう改革を主導できるのは、日本企業では、やはり総務ということになりますよね。
今、企業では人材が大きな経営課題となっているので、人事部は「戦略人事」などという言葉も出てきて、経営戦略に関わる役割を担うポジションだという認識が浸透してきている印象があります。
我々としては、人事部はもちろん、総務部を始めとした「バックオフィス部門」が変わることで企業活動がよくなり、経営は大きく変わるのではないか、という仮説を持ってこの「経営×総務」という企画を立ち上げたのですが、いまのところ、総務の役割・機能を経営戦略の一つとして考える経営者はあまり多くないように思います。経営と総務の間にかなり距離があるというか……。
岡田 現場と総務の関係は長年積み重ねられてきた歴史もあり、比較的風通しも良いと思いますが、おっしゃるとおり、一般的な企業では、経営と総務との距離感はまだまだ大きいのではないでしょうか。

経営にとって総務の役割というのは、「組織にとって当たり前の状態」を維持していく運営管理の役目と、それに伴うコスト削減が最大のミッションである、という認識がほとんどだと思います。コスト削減の意義は、削減額そのものが利益押し上げにつながりますので、それはそれで経営戦略に大きく貢献しているものではあります。
そうしたオペレーショナルな部分での役割は認識されていると思いますが、「できて当たり前」ではなく「当たり前にできる総務の基盤維持力」に加え、先ほど私がお話したオフィス移転のような、攻めの戦略的な部分を担うことができる部署・ポジションであるということも、経営者は認識すべきことだと思います。
――それが認識されている企業とされていない企業では、企業活動にこんなに如実に差が出てくる、といったことが出てくると、経営者たちの総務への見方が変わってくるのではないか、と。
岡田 確かにそうですね。そうした意味では、今、経営トップが比較的目を向けやすいのはBCP(事業継続計画)です。
これだけ地震が頻発している状況下、いつ何時大災害になるかわからないというのは誰しもが感じています。また、地震だけではなく、水害だったり火山であったりと、自然災害に対してBCPの問題は多くの経営者が意識を持っています。この領域は、総務が経営に直接、戦略を提案できる重要な分野だと思います。
オフィス移転のような大きな話は、タイミングを見計らわずに総務が重要性を説いて話をしても、「今は、他にも重要課題がある。総務は日常の仕事をきっちりしていればよい」となってしまいます。最初からいきなり“戦略”を振りかざしてしまうと「それは、経営企画部門に任せておけばいい」という話になりがちです。BCPのように経営に直結するような問題から、少しずつ、経営と関わりを持っていくことが重要です。
――私も、経営に向けて総務を戦略的な部署として捉えることを単に訴えても、コンセプトが先行してしまってイマイチ響きにくいのではないか、という思いはありました。BCPは「総務が企業のリスクをこうマネジメントすることで本来、被害総額がこれくらい出るものを事前にこうやって抑える。だからこの活動は経営的にこれだけ大きな意味を持つ」、ということがわかりやすく表現できるものかもしれないですね。
BCPは事業部単位では取り組みは行なわれていると思いますが全社的な取り組みとなると、広報もやらないし、経営企画もやらないので、やはり総務しか担えない部分だと思うんです。そういう、総務しか担えない経営の核となるポイントで、そこで総務が経営的役割を作っていく、自ら立っていくということも大事だと思います。
今の総務はなぜ、経営から戦略部門として見られていないと岡田さんは思われますか?



