総務にしか見えない「働き方改革」の本質

 アベノミクスが声高に叫んでいる「働き方改革」。これは働く場の改革なくしてあり得ない。働く場はイコール舞台であり、働く場を支え変革していく主役は社内の総務なのである。ある意味、経営改革の大きな部分を握っているのは総務であると言っても過言ではないだろう。

「総務は縁の下の力持ち」とよく言われる。この言葉は何もネガティブな意味だけではない。縁の下、つまり舞台を根底から支えていることを意味している。現場の社員が輝き活躍する舞台を支えているのが、まさに縁の下の力持ちである総務なのである。この舞台をいかようにも変えることができるのも、また総務だと言えるだろう。

 経営は、このような総務の役割、機能を十二分に活用するにはどうしたらいいのだろうか? 経営の意思を汲んで、思う存分総務が仕事をしてくれるにはどうしたら良いのだろうか? 「総務が変われば会社が変わる」と言っても過言ではない。この実現のための一つの要素が、社内の「現場に精通する総務」を作ることなのである。

総務のお客様は社員、あるいは?

「総務のお客様は社員である」。そのように言われることが多い。正しくは、総務のお客様は経営であり、総務の消費者は社員である、となる。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムのFM(ファシリティ・マネジャー)クレド(信条)には、「お客様と消費者の違いを知る」というものがある。ここで言うお客様とは“オーナー”であり、あなたをクビにすることが出来る人。消費者は“ユーザー”であり、あなたが作ったものを使ってもらう人を指す。

 となると、先に記した、総務のお客様は総務をクビにできる人という意味となり、それは経営者を指す。消費者は、総務が提供するサービスを使う人という意味となり、現場の社員となる。つまり、総務が本来従うべきは経営者であり、その意思の下、社員に様々なサービスを提供することになる。なので、総務のお客様は経営者であり、決して社員ではないのである。

 しかし、経営の意思に従ったとしても、現場の社員が従えないような施策では実行されない。オーナーの意向に従いつつも、ユーザー目線の施策にしていかないといけない。

 なので、総務というのは、現場に精通する必要がどうしても出てくる。現場社員の働く状況、課題や不安、何がモチベーションとなっているのか、等々。現場の空気感も把握しておくことで、はじめて現場が従い、結果、現場が変わる施策が実践されるのである。