Bean to Barのチョコレートと
コニャックのフードマリアージュ
テーブルの上、「Hennessy X.O」の横に、チョコレートが置かれている。「Hennessy X.O」とチョコレートのコラボ、フードマリアージュとしてのオリジナルのチョコレートである。
コラボするのは、日本におけるBean to Barの旗手ともいえるMinimalのチョコレート。Bean to Barとは、“カカオ豆から板チョコまで”という意味で、カカオ豆の仕入れからチョコレートとしての商品化までを一貫して自社で行なう製造スタイルのことだ。
Minimalは一般的なチョコレートよりも豆の粒子を粗くしており、ザクっとした食感が特徴的だ。カカオ豆そのものの個性を味わえるなど、これまでとはひと味違うチョコレートの楽しみ方ができるブランドとして、世界的にも注目されている。
そのチョコレートを口にした猪子寿之は、「ああ、これはいいね。バーのカウンターでも飲むのもいいけれど、食後のデザートとして、まろやかなHennessy X.Oと、カカオ豆が際立つMinimalの組み合わせも、ありだと思う」と、意外な発見を楽しむ表情だ。
マリアージュとは、本来は婚姻や婚礼を意味する言葉。飲み物と料理の組み合わせが良いことを言うが、それは猪子寿之が手がけるアートの世界でも同様のことがいえる。
昨年チームラボは、光と音による幻想空間での体験型イベントを演出した。ミュージシャンもDJもステージも存在しない異空間に、光の線で立体物を構築する。オリジナルの音楽と光で構成されたマリアージュに、鑑賞者は身体を没入してアートを“体感”する。
猪子寿之はこう説明する。「身体ごとアートの塊に没入することで、自分とアートとの境界は曖昧になる。その体験によって自己と世界との境界がなくなり、世界に溶け込んだ一体感を感じることができる。人々はおそらく、世界と人間の間に“境界”があると思い込みすぎている。デジタルアートは、その物質的な境界を破壊することができる」