全員参加で進む都心型建替え
「乃木坂ナショナルコート」に学ぶ

建替え前の乃木坂ナショナルコート(右)。説明会などを繰り返し、勉強を重ねて全員参加で権利交換に至った(左)。2年後には新しいタワーマンションに生まれ変わる予定

 1978年に竣工した乃木坂ナショナルコート(東京都港区、8階建て51戸)は、設備の老朽化と耐震性への不安から建替え検討に入り、約3年の検討期間を経て2011年2月、三井不動産レジデンシャルを事業協力者として選定した。

 その直後に東日本大震災が起き、事業を取り巻く環境が大きく変わっていく。

 「一般設計での建替えや総合設計での建替えなど、複数の事業計画案を検討しましたが、最終的に港区の総合設計制度を使って容積率400%を600%に高め、地上25階建てのタワーマンションにする方針を決定しました。説明だけでは建替え後のタワーマンションのイメージが湧きづらく、また地震への不安を抱く区分所有者の方がおられました。そこで、タワーマンションや最新のマンションのイメージを抱いてもらうために、管理組合として近隣の総合設計を使ったタワーマンションや販売中の新築マンションなどを見学する機会を設けました。参加できなかった区分所有者の方にも、個別に案内して事例を見ていただきました」(同社プロジェクト推進室主任 永山允氏)

 築35年が経過し、区分所有者の年齢や生活スタイル、経済事情などが異なっていた同マンション。建替えを推進するため、三井不動産グループ企業の連携を生かして合意形成を図った。

 マンション以外に所有する不動産の有効活用などを含めた資産活用については三井不動産のレッツ資産活用部が、仮住まいに関する相談については三井不動産レジデンシャルリースが、それぞれ専門の窓口を設けて所有者の悩みに対応したことが、建替えの推進力に結び付いた。

 熱心な管理組合理事会と事業協力者のサポートにより14年8月に建替組合を設立、16年2月には建替組合員の全員参加で権利変換に至ったという。

難局を乗り越えて
新たなマンションへ

三井不動産レジデンシャル
プロジェクト推進部
プロジェクト推進室主任
永山 允氏

東日本大震災の復興工事や13年に東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したことから、建築の資材費や人件費が高騰し始めた

「そこで建築費高騰により悪化した経済条件を可能な限り回復するために、それまで検討していた基本設計図を白紙に戻し、ゼロから設計の見直しを行ないました。梁の影響がなく高いサッシで開放的な居住空間を実現することで、建替組合から高値で保留床を買い取る方針に切換え、難局を乗り越えたのです」(永山氏)

時間がかかるマンション建替えの場合、経済状況の変化で事業計画が大きく変わったり、スケジュールの遅延などを余儀なくされることもある。そんな局面でも高いグレードを維持し、資産性を上げる方向で建替え成功への道を切り開くところに、同社の手腕を見た。

乃木坂ナショナルコートの建替えは、19年2月に竣工予定だ。


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 三井不動産レジデンシャルでは、マンション再生の成功事例から学ぶ「マンション再生セミナー」を開催しており、好評だ。

 テーマは「検討初期の再生検討の進め方」や「法改正の行方」など。セミナー後は個別相談会を設けており、各管理組合の疑問や悩みにきめ細かく対応している。

 


お問い合わせ
三井不動産レジデンシャル株式会社 マンション建替え相談室
ホームページ:http://www.mfr.co.jp/tatekae/