大学と企業の
橋渡し役を担う

寺西 豊
京都大学医学研究科
医学領域産学連携推進機構 副機構長
特任教授 工学博士

 大学の産学連携機関でも、民間のベンチャーキャピタルとの協働に期待をかけている。研究者を研究に専念させるための支援体制が必要との認識が広まっているからだ。京都大学医学部研究科の産学連携機関である医学領域産学連携推進機構は17年4月、「イノベーションハブ京都」を開設した。研究者や投資家、実務家が一体となりシーズの実用化を推進する組織だ。

 寺西豊・同副機構長は、「ハブの開設により協働体制が制度的にもハード的にも整備された。MUCAPにはこれまでも活動に参画してもらっており、引き続き資金だけでなく知恵も出してもらいたい」と語る。

 東京大学の生命科学系の産学連携機関であるトランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ(TRI)では、「SSC」という委員会を設けている。知財や組織マネジメント、医療系弁理士などの専門委員が、研究者に実用化に向けた戦略的なノウハウを注入するのである。

加藤益弘
東京大学
トランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ
特任教授 医学博士

 TRIの組織づくりを進めてきた加藤益弘特任教授によれば、「産学には、基礎研究データの構築の優先順や基礎研究の進め方について考え方の違いがある。SSCでは、こうした認識ギャップを埋めたい。そのために科学に深い知見を持ち、科学の実用化にこそ興味を持つ、大学と企業の橋渡し役になれるベンチャーキャピタルが必要だ」。

 長谷川部長は、「ベンチャーへの投資だけでなく、製薬会社の一部事業の切り出し、自社研究開発の外部調達、アカデミア創薬でスキームをつくっての投資など、さまざまな創薬支援を手掛けていきたい」と語る。

 オープンイノベーションの波は、従来は関与しなかったプレーヤーたちが、創薬で重要な役割を担うことも意味する。

 「MUCAPの資金で誕生した薬です、と言ってもらえる投資を続けたい。当社の長谷川部長や島﨑副部長は製薬会社の出身。製薬会社に勤めていなくても創薬に関われる時代であり、製薬会社での専門分野の経験と新しいことへの好奇心を持ち、さまざまな属性の人たちとコミュニケーションが取れる人材を当社は求めている」(半田社長)

 MUCAPの取り組みは、ベンチャーキャピタルのイメージを変えようとしている。

三菱UFJキャピタルの採用情報はこちら>>