ムダ7:意味のない残業
旧式の営業スタイルの象徴的存在
セールスフォース・ドットコムでなくなった意味のない残業のムダ
・営業日報作成のためだけの帰社
・移動中の無為な時間
・非合理的な働き方
残ったタスクを処理するという意識転換
ここまで多くの企業にありがちな6つのムダを紹介してきたが、それらがないため、セールスフォース・ドットコムには当然の帰結として「意味のない残業」もない。
日中できるだけ客先を回り、夕方に帰社してからは、未読のメールを整理して、提案書・企画書や営業日報をまとめ、翌日の訪問先の準備をしてから、終電近くに退社する―このような毎日を送っている営業は多いだろう。寺本氏も前職ではその一人だったが、セールスフォース・ドットコムに外勤営業として入社してからは1日の時間の使い方がまったく変わったという。「1日の平均訪問社数は前職よりも2倍近くに増えたのですが、移動中やちょっとした空き時間でもモバイルデバイスなどからSalesforceを使って情報更新したり、上司に相談したり、情報収集することで仕事の進め方が非常に合理的になり、残業は驚くほど減りました。まれに、日中に時間が取れず、夕方からは接待に行くという日もありますが、そんなときは帰宅してからSalesforce上で残務を片づけていました。残業というよりも、やらなければいけないタスクを処理するという感じです」
事情は鈴木氏も同じだ。「前職では、最終訪問先がどんなに遠くても、一旦は会社に戻って営業日報を書き、上司に提出しなければなりませんでした。しかし、セールスフォース・ドットコムでは、移動中の電車の中などでSalesforce上に活動履歴を作成しておけば、後は上司が自動的に日報を引き出せるスタイルになっているため、心おきなく直帰できます」。
変化したのは営業の時間の使い方だけにとどまらない。Salesforceを使えば、より多様なワークスタイルに対応することも可能になる。実際、鈴木氏がマネージャーを務める内勤営業の部署には、出産を機に地方に帰省し、東京のオフィスに出社していない部下がいるという。内勤営業という業務の特性もあるが、その部下は家でPCと電話を使って仕事をこなし、部内のミーティングの際はWebカンファレンスを使って参加しているという。
最近では、女性が出産し、育児をしながらでも働き続けられる環境や、今後増加が予想される老親を介護しながらの就業環境の整備の必要性も唱えられている。Salesforceは、会社という場所に制約せず、短時間で高い労働生産性を実現するようなワークスタイル変革の可能性も秘めている。
Salesforceで変わるポイント
ワークスタイルの変化で時間の使い方も変わる
Salesforceのように、どこにいてもモバイル端末で作業ができるという点は、外回りの多い営業に大きな助けとなるはず。会社としても、社員の生産性向上が実現できるポイントは貴重だ。
まとめ
課題にぶつかるたびにゼロから始めるのではなく
高い次元で情報を共有して常に進化を続ける営業を!
「今までは本当に単価の高い仕事をしていた」「目には見えないムダを積み上げていたことに気づかなかった」
いずれも、前職と現在のセールスフォース・ドットコムでの仕事内容を比較して、2人のマネージャーが述懐した言葉だ。冒頭でも述べたように、多くの営業が日々のムダに気がついており、それをどうにかしなければと思い悩んでいる。しかし一方で、一人では変えようのない現実があるのも確かだ。
寺本氏は、Salesforceの活用法を説明する中で次のように語った。「Salesforceを一番使い込んでいるのは、私たちマネージャーだと思います」
この「Salesforce」を「エクセルシート」に置き換えてみれば、旧来の営業組織とは異なる特性が浮き彫りになる。もちろんエクセルシートでは不可能であるが、営業活動の現状を把握し、自ら分析を加えることで、組織の問題点を明らかにして次の戦略を考える。実はマネージャーこそが、旧来の営業組織を変革していく中核となりうるのである。
そしてもう一点。「営業会議のムダ」「何かを探す時間のムダ」の項でも触れたが、会議のたびに毎回ゼロから現状把握をしたり、何か課題にぶつかったとき、すでに知見が蓄積されているにもかかわらず、ゼロから作り直したりする。こうした、いわば「ゼロへの回帰」こそが、最大のムダといえるのではないだろうか。
Salesforceのようなツールを使って、すでにある状況認識やナレッジを全員で共有し、さらにその上に新たな知見を加え続けていくことで、営業をさらに進化させていく。これこそが、現在の営業に求められていることではないだろうか。
営業会議
常日ごろから情報共有を徹底させることで、現状把握ではなく、次の戦略を考える。
エクセルシート
全員が共通認識に立てるツールを使って、数字にごまかされない戦略を。
叱咤激励
中身のない言葉ではなく、目標を再認識してモチベーションを高める。
何かを探す時間
せっかく蓄積された過去のナレッジをすぐに活用できる仕組みづくりを。
名刺フォルダ
顧客先企業など関連する情報を結びつければ営業の武器に。
ハンコ
「ビジネスのスピードを損なわない」ことを最優先に考えるべき。
意味のない残業
仕事のやり方を変えればワークスタイル変革にもつながる。