2020年の提供開始をめざし、NTTドコモは「5G(第5世代移動通信システム)」の研究開発を加速している。高速性と低遅延、多数端末との同時接続などの特長を持つ5Gは、多様な産業にインパクトを与える。今後3回の連載で、「5Gがつくる未来」について展望していきたい。連載第1回は、10月に開催されたCEATEC JAPANでの、サイバーアイ・エンタテインメント社長兼CEOの久夛良木健氏とNTTドコモ副社長の阿佐美弘恭氏との対談内容を紹介する。
5Gの特長を生かす
「5Gトライアルサイト」
──LTEの普及によって、モバイルの通信環境は非常に快適になったという実感があります。最近はさらなる高速化を実現する「5G」の話題が、多くのメディアで取り上げられるようになりました。まず、5Gはどのようなものか、NTTドコモの阿佐美さんにお聞きします。
代表取締役副社長
阿佐美 弘恭氏
阿佐美 モバイルのネットワークは急速な進化を続けています。「iモード」が始まったのは1999年ですが、当時は10Kbpsに満たない通信速度でした。当社の「PREMIUM 4G」は、今年9月には受信時最大788Mbpsまで高速化しています。2000年代に入ってから、10万倍近い高速化を実現したことになります。そして、当社は今20年のリリースをめざして、5Gの研究開発を推進しています。
5Gの特長は大きく3つあります(図1)。現在の20倍以上に相当する20Gbpsの高速性と大容量、低遅延、そして多数の端末と同時接続ができること。東京五輪のときには、日本を訪れた各国の人たちに5Gの世界を体感してもらいたいと思っています。
久夛良木 5Gは大量データを高速に送ることができるほか、エリア内の膨大な数のセンサーからのデータを収集することができるので、インパクトは大きいと思います。それは、リアルの世界を高精度でバーチャル空間に再現可能になることを意味します。リアルとバーチャルの融合が進むという言い方もできるでしょう。
──現状では、5Gへの取り組みはどの程度まで進んでいるのでしょうか。
阿佐美 当社はさまざまな業種の企業との協業をベースに、今年5月、「5Gトライアルサイト」をスタートさせました。東京・お台場や東京スカイツリーで試験的に5Gの通信環境を構築し、新たなサービスづくりを進めようとしています。その事例を幾つか紹介しましょう。
まず、フジテレビジョン(フジテレビ)様とのコラボレーションにより、新体感コンテンツの開発に取り組んでいます。例えば、AR(拡張現実)の技術を用いて、ジオラマ上にスポーツ選手の姿を合成して投影します。スタジアムから遠く離れた場所で、観客は動き回る選手たちの3D映像を楽しむことができます。
また、綜合警備保障(ALSOK)様とは、超高速・大容量という5Gの特性を生かして、警備システムの高度化に向けた実証実験を行っています。街頭などに設置したカメラの映像がHDから4Kに高精細化すれば、さまざまなものを捉える認識率が大きく向上します。
それぞれの分野で独自の強みを持つ企業と共に、5Gによる新しい価値を創出していきたい。そんなチャレンジの最前線が、5Gトライアルサイトです。