欧米企業は専門組織を設置
日本企業は暫定組織で対応
企業のIT活用は、情報システム部門が担当するケースが多いと思いますが、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の文脈においてIoT活用を考えると、製品・サービス部門の担当者がこれを担うべきです。ところが、日本企業には、プロダクトマネジャー(PM)がいないケースがあり、事業プロセスの川上から川下が分断されてしまい、どういうターゲットにどういう製品・サービスを売るか、事業戦略に一貫性が欠落しているケースがみられる。
2017年、ガートナーがグローバルのCIO(Chief Information Officer)を対象に、「2018年に向けて、戦略的テクノロジーで重要なものは何か」を聞いたところ、日本のCIOの間ではIoT、DL(深層学習)が上位を占めました。一方、グローバルのCIOではアナリシス(Advanced Analysis)が上位となりました。
もう1つ、ガートナーが行った別の調査で、日本、ドイツ、英国、米国の企業にIoTの推進体制について聞いたところ、独・英・米の企業がいずれも専門組織を設置して取り組んでいるのに対し、日本企業は暫定的な組織、すなわち既存の組織で対応していることが明らかになりました。
これら2つの調査結果から見えてくるのは、日本企業はIoTというキーワードには敏感だが、実体としてものごとを進めることに対し、エネルギーが注ぎ込まれていないという現状です。この傾向が今後も続けば、すでに走り始めている世界各国の企業と、まだまだ走る準備をしている日本企業との間で、どんどん格差が広がっていくのではないかという懸念があります。
何故、専門組織が必要なのでしょうか。たとえば、経営トップがキーワードを聞いて、「うちも何かやらないといけない」と思い、そのまま技術部門に落とし込むと、今日現在の現場の最適化が始まります。むしろ重要なのは、デジタルトランスフォーメーションを意識するなかで、本当につくるべき製品・サービスをどうするかです。現場の最適化はIT化が進んだにすぎないのです。経営トップは、経営戦略のなかでデジタル技術をどう位置付け、どういう戦略で自社が変わっていくのかを明確にしていく必要があります。このことについて考えている既存の部門はありませんから、欧米企業のように新たな組織を設置する必要があるのです。前述のような先進企業が存在する一方で、日本企業全体として、"ズレ感"や"遅れ感"があることは気になります。