日本企業のIoT推進を阻害する
さまざまな要因をいかに取り除くか

 欧米の企業では、専門組織をアサインし、IoT推進に取り組んでいます。日本でも統計をとると、2017年2月時点で専門組織を設けているのは15%でした。特徴的なのは、15%の企業のうち、約半数は外部から人材を採用し、IoTを推進し、残りの半数も1年以内に外部から人材を確保するとしていることです。社内の人材だけではIoT推進は難しいのかもしれません。

 新たなビジネスにチャレンジしていくときに、これまでの自社の常識や業界の慣習から離れたところから客観的にものごとを俯瞰する必要があります。ところが、日本企業の場合、依然として長期終身雇用のもと、長らくその会社で働く人が多いので、知らないうちに画一的な価値観が刷り込まれていきます。そこをうまくブレークスルーしていくには、外部から人材を確保するのも有効な選択肢となるでしょう。

 そもそも新たなビジネスに取り組んだことがないので、「どうしていいかわからない」という声もよく聞きます。過去10年、20年、日本企業は新たなビジネスにあまりチャレンジしてきませんでした。企業買収を通じて、多岐にわたる事業を手がけるようになりましたが、社内にいる人たちは従来の組織の力学で仕事ができるので、変化に慣れていません。経験がないからできないというのは、シンプルですが、深刻な問題です。であれば、経験がある人に声をかけ、社内外から採用すればいいだけの話です。

 もう1つ、IoT推進を阻害している要因として、ソフトウェア開発に対する敷居の高さが挙げられます。日本企業は、IT部門を子会社として切り離し、ソフトウェア開発に当たっては、外部のSIerやITベンダーに委託しているケースが多いため、自社内に迅速にソフトウェアをつくって試してみる環境がありません。

 今後のデジタル時代に向かって、ここはもう一度根本的に見直す必要があるかもしれません。外部に委託すると、それだけで時間とお金がかかります。社内の人材が臨機応変に対応していく仕組みをつくっておかないと、アイデアもなければ、ちょっとした試作をする力量もないのであれば、時間ばかりが過ぎていくだけです。

 これはソフトウェア開発やITに限った話ではないのかもしれません。多くの大企業は、これまで人事、経理、営業、マーケティング、製造、企画など、ほとんどの部門で業務を外部にアウトソースしてきました。ですから、何かをやろうとしたときに、すぐに業者を呼んで相談するから、新しいことをはじめようにもノウハウが蓄積されていない。これではうまくいくはずがありません。構造的、組織的な阻害要因をいかに取り除くかも重要なポイントです。